2019.08.23

負の連鎖を断ち切る1本の犠打。
履正社スタイル徹底で初制覇を遂げた

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

 センバツ準優勝2回。T-岡田(オリックス)、山田哲人(ヤクルト)、安田尚憲(ロッテ)らドラフト1位の野手も複数誕生。どんなに強くなっても、どんなに強力打線になっても、履正社(大阪)・岡田龍生監督はバントに重きを置く姿勢を崩さない。

 今夏の大阪大会でも、チーム打率.367、本塁打10本の強力打線にもかかわらず、7試合で15犠打。ランナーが出れば確実に犠打で進塁させる。それが変わることのない”履正社スタイル”である。

星稜を破り、甲子園初優勝を飾った履正社ナイン ところが、この夏の甲子園ではそのお家芸が決まらなかった。準決勝までの5試合で犠打の失敗は6(成功は8)。準決勝の明石商(兵庫)戦では2度試みて2度とも失敗。岡田監督も「バントが決まらんのですわ。一発(1球)で決まると流れができるんですけどね」と嘆いていた。

 決勝の相手は最速154キロの速球とキレ味鋭いスライダーを持つ星稜(石川)の奥川恭伸。ストレート、変化球とも超高校級で、バントを決めるのは容易なことではない。

 2回表にその場面がやってきた。先頭の内倉一冴(かずさ)がヒットで出塁すると、岡田監督は6番の西川黎(れい)に送りバントを命じる。だが初球、スライダーをファウル。2球目もスライダーをファウル。またも決まらないのか……。そんな嫌なムードになりかけた3球目、西川は3球続いたスライダーをピッチャー前に転がし、なんとか成功させた。

「(それまでの失敗は)バットでいってしまっていたので、体を使ってやろうと。自分はアウトでいいので、絶対にランナーを送ろうと思いました。自分たちはバントを大事にするチームなので、大会中もずっと練習していました」(西川)

 この成功で履正社ナインは”バントの呪縛”から解き放たれる。

 5回表は無死一塁で2番の池田凛がカウント1-0から一発で送ると、8回表にも無死二塁から西川が同じく1-0から1球で成功。続く7番・野口海音(みのん)の勝ち越し打を呼び込んだ。さらにその野口を、8番の野上聖喜(いぶき)が初球をセーフティー気味に送って、続く岩崎峻典(しゅんすけ)のタイムリーを生んだ。