2019.08.09

甲子園の赤レンガを覆う「蔦」の秘密。
緑のカーテンの苗はどこから?

  • いとうやまね●文 text by Ito Yamane
  • photo by kyodo news

スポルティーバ・トリビアvol.4【甲子園編】

 夏の甲子園球場は、蔦(ツタ)の緑に覆われる。太陽を浴びた茎も葉も生命力に満ち溢れ、我々野球ファンを迎えてくれる。見事なまでの「緑のカーテン」は、1924年の球場設立時に植栽された蔦の子孫たちだ。

球場リニューアル前の蔦。ここから一度伐採され、現在は再植樹されている かつて甲子園の外壁を飾っていた430株の蔦は、2006年にはじまった球場のリニューアル工事に伴い一旦伐採された。それに遡ること6年前の2000年、「20世紀メモリアル事業」の一環として全国の高校野球連盟加盟校4170校に蔦の種子が配布された。そして、各地で育てられた蔦のうち、生育状態の良い苗が233校から集められ、2008年から「ツタの里帰り」と称して再植樹がスタートしたのである。

 甲子園の蔦の種類は2つ。メインは「ナツヅタ」と呼ばれるブドウ科の蔦で、季節ごとにその表情を変える。秋には赤く色づき、冬は葉を落とす。日当たりの良くない場所には、日陰に強いウコギ科の「キヅタ」が使われている。常緑樹で、冬でも緑の葉を蔓(つる)に残す。

 蔦は見た目の美しさもさることながら、雨風や直射日光から壁を守る。そして夏は蒸散作用で暑さを軽減し、冬は内部を暖かく保ってくれる。いいこと尽くしかと思いきや、大変なこともある。繁殖力が強いため、放っておくと室外機や配電盤、配管の隙間にも蔓を伸ばしてしまうのだ。近くの家や電柱、木にすら忍び寄り、気づくと蔦で覆われていた、ということもある。甲子園では、グラウンドの芝も管理している阪神園芸株式会社さんが、そんな蔦の暴走に目を光らせている。

 前述の蔦を里帰りさせた233校だが、レフトスタンド照明塔支柱の根元に、校名を刻んだ銘板があるので、機会があれば眺めてほしい。余談だが、球場のお土産屋に行くと「蔦せんべい」や「ツタの葉サブレ」がある。ご賞味あれ。

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