あの夏から12年。不器用なエースは監督となり「がばい旋風」を起こす

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • photo by Kaku Keisuke

 今年の佐賀大会は、2007年夏の甲子園で"がばい旋風"を巻き起こした佐賀北の優勝メンバーが監督となって戦い、大いに注目を集めた。

 2007年夏の決勝で逆転満塁ホームランを放った副島浩史は、昨年11月に唐津の監督となり、今年初めての夏を迎えた。佐賀大会ではいきなり開幕試合に登場し、コールド勝ち。続く2回戦もコールドで大勝すると、3回戦は優勝候補の佐賀商に4対1と勝利しベスト8進出。準々決勝で敗れはしたが、見事な快進撃を見せた。

 その佐賀商に初戦で敗れたのが杵島商で、監督を務めるのが2007年の全国制覇をマネージャーとして支えた真崎貴史だった。

 そして今夏の佐賀を制したのがほかでもない佐賀北であり、指揮を執るのが2007年のエースだった久保貴大だ。

就任2年目で甲子園出場を果たした佐賀北の久保貴大監督就任2年目で甲子園出場を果たした佐賀北の久保貴大監督 佐賀大会での佐賀北は、まさにあの夏を彷彿とさせる戦いぶりだった。決勝戦はスクイズで先制し、きっちり追加点を奪って、終盤にダメ押し。派手さはないが、5試合で27犠打が示すように小刻みに点を奪って、勝利をたぐり寄せた。

 決勝戦の試合後、久保はこう言った。

「基本は百崎先生のやってきたことを踏襲している。それが佐賀北の基礎だと思うので」

 2007年の優勝チームを率いた百崎敏克(ももざき・としかつ)は、現在は同校野球部の副部長として久保を支えている。陣頭に立つことはなくなったが、今も連日のようにグラウンドに顔を出しては部員から提出される野球日誌に目を通し、絶妙なバランスで若き指揮官と部員との間に入っている。チーム内の空気を誰よりも敏感に感じ取っているのが百崎である。

「久保はプレッシャーも大きかったと思いますよ。現役時代は甲子園で勝っているうえに、母校ですからね。なにより不器用な子ですから。現役時代はひとつの球種を覚えるのに2年かかったのが久保。コツコツやってきたことが結果になった。なにより、この1年の間に生徒をしっかり掌握できたことが大きかったかな」

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る