小宮山悟監督率いる早稲田大は3位。
名門再建へ「我慢比べ」の育成

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

【打てなくても、めげない、腐らない】

 中川は全13試合に出場し、成績は47打数6安打、打率.128。小宮山監督は、最後までスタメン起用を続け、代打も出さなかった中川についてこう語った。

「本人が一番苦しんでいたはず。結果が出なくてつらかっただろうし、プレッシャーも感じていただろう。監督として『いける』と判断し、こちらの期待に応えてくれると思うから起用している。彼のいいところは何でもソツなくこなすところ。打撃についてもアプローチはいいので、凡退しても納得できる。

 大切なのは、大学を卒業する時に『さすが』と思わせる選手になっていること。今は我慢比べの時期。ここを乗り越えてほしい。すぐに結果が出るほど、バッティングは簡単じゃないでしょう」

 一方の中川は、法政大学との2回戦で初めて2安打を放ったあと、こう語った。

「これだけ打てないのは、野球人生で初めてです。ずっと試合に出させてもらってありがたい。田中浩康コーチには『打率は過去のことだから』と言われていますし、4年生の米田圭佑さんには『打てなくてもいいから』とリラックスできるような言葉をかけてもらっています」

 高校野球とのレベルの違いは大きい。東京六大学の投手たちのコントロールと球質に慣れるためにはどうしても時間がかかる。

「レベルが違うから、焦って、迷いが出る。でも、割り切って打席に立つように心がけています。いい結果が出なくても、めげない、投げやりにならない、腐らないように」

 中川は、失敗と成功を繰り返しながら、いろいろなことを学んだはずだ。

【個人の能力を見ればもっとやれる】

"先を見据えた育成"を見せる一方で、今のチームの屋台骨を背負うべき選手には、プライドをくすぐりながら刺激を与えた

「チームではトップかもしれないけど、六大学ではどうか。全国的に見てどうか」

 試合で起用される機会が多かった選手たちは、小宮山監督の厳しい視線にさらされることでこれまで以上の結果を残した。

 2018年秋に不振に陥った4年の加藤雅樹は最後まで首位打者を争い(打率.396でリーグ2位)、満票で2度目のベストナインに選ばれた。同じく4年の捕手・小藤翼と遊撃手の檜村篤史、3年の外野手・瀧澤虎太朗も初めてベストナインに名を連ねた。

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