2019.06.05

小宮山悟監督率いる早稲田大は3位。
名門再建へ「我慢比べ」の育成

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

 ここ6シーズン、東京六大学野球の優勝から遠ざかっている、名門・早稲田大学野球部の第20代監督に就任した小宮山悟。再建を目指して指揮を執った初めての春季リーグ戦は、7勝6敗、勝ち点3。チーム打率、防御率ともにリーグトップで、主将の加藤雅樹をはじめ4人がベストナインに選ばれながら、リーグ最後の”早慶戦”で敗れ3位に終わった。初めてシーズンを戦い終えた指揮官は、この結果に何を思うのか。

春季リーグ戦が初采配となった小宮山監督 小宮山悟監督が、野球解説者として活動していた2016年の著書・『最強チームは掛け算でつくる』(KKベストセラーズ)に、こんな言葉がある。

「強い組織をつくるためにまず必要なのは、人材の発掘と育成、教育」
「選手が育たないのは、腰を据えて使わないから」
「人は失敗と成功を繰り返しながら、いろいろなことを学ぶ」
「試合で経験を積まないと成長することはできない」
「実戦のなかで選手たちは何かに気づき、成長していく」

 解説者として語ったことと、監督になって感じたことはまったく同じではないはずだ。早稲田大学野球部という名門の監督として初めて采配を振るにあたり、さまざまな悩みや葛藤があったことは想像に難くない。OBからの批判の声も耳に届いただろう。

 成績がよくない選手を起用し続けるのには勇気が必要だ。しかし小宮山監督は、リーグを通して不振にあえぎ続けた1年の中川卓也を、一塁手スタメンで最後まで起用した。

 2018年夏の甲子園で、大阪桐蔭(大阪)の三番打者としてチームを春夏連覇に導いた中川のバットから、快音はほとんど聞かれなかった。初戦の東京大学との2試合では9打数1安打。続く明治大学との2連戦では7打数ノーヒット(5三振)で、この時点で打率.062。ドラフト1位候補の森下暢仁を擁する明治大学に2連敗を喫したことを考えれば、「スタメン落ちもやむなし」と思われた。

 それでも中川がスタメンから外れることはなかったが、調子は上がらなかった。立教大学との1回戦で4打数0安打、2回戦は4打数1安打。1勝1敗で勝ち点がかかった3回戦も4打数ノーヒットだった。

 法政大学との対戦では、1回戦で1安打、2回戦で初めてのマルチヒット(2安打)を記録し、1打点を挙げて勝利に貢献したが、3回戦はまたノーヒット。早慶戦3試合で放ったヒットはわずか1本(8打数)に終わった。