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「サイン盗み騒動」→星稜監督が復帰。
奥川恭伸は驚異の制球を見せた

  • 楊順行●文 text by Yo Nobuyuki
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

「150(キロ)を出しにいきました」

 いつもと変わらぬにこやかな表情で、星稜(石川)のエース・奥川恭伸は言った。

 6月1日、春季北信越大会1回戦。センバツの習志野戦以来、65日ぶりに公式戦のマウンドに上がった奥川は4回、砺波工(富山)の3番・齋藤健也への3球目に150キロを計時。スタンドをどよめかせた。

久しぶりの公式戦で150キロをマークした星稜・奥川恭伸久しぶりの公式戦で150キロをマークした星稜・奥川恭伸「そういう数字が出れば、球場の雰囲気を変えられる。先週、久しぶりに投げたんですが、今日は投げる前からドキドキだったんです。最初は公式戦独特の緊張感に力んでしまったのですが、徐々にストレスがなくなり、バランスがよくなりました。今日は8割の力でコントロール重視がテーマ。あの150キロだけは、意図的に出したんです」

 結局、6回まで1対0と気の抜けない展開だったが、「球場の雰囲気が変わった」と言う7回以降、星稜が効果的に追加点。6対0で逃げ切った。6回でお役御免の奥川は、打者21人に対し、2安打無四球6三振と貫禄を示した。

 それにしても安定感は秀逸だ。この日の69球中ボール球はわずか14球。8割近いストライク率はプロでもなかなかおらず、ワンボールノーストライク以外でボールが先行したのは21打者中2人だけ。スリーボールは一度もなく、なかなか打者有利のカウントにしないのが奥川の非凡な術だ。

 センバツ以後、右肩に軽い張りを訴えて石川大会では登板なし。だが、ほかの5人の投手が防御率0.79と好投して優勝を飾り、「自分が投げて、ここ(北信越)で負けたら意味がない、とプレッシャーをかけました」(奥川)。

 5月末には練習試合で1カ月半ぶりに実戦登板し、土曜には4回、日曜に2回を投げ、試運転は進んでいた。奥川によると、「投げたあとも張りはなく、問題ないです」と、北信越での順調な復帰につなげている。

 センバツで敗れた習志野戦。「相手にサイン盗みがあったのではないか」と直接抗議した林和成監督が、「世間を騒がせた状況を勘案」し、4月15日に学校から指導禁止処分を受けた。

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