琉球の奪三振王は及川雅貴より評価が上。ドラフト上位候補に名乗り

  • 加来慶祐●文 text by Kaku Keisuke
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 一塁側のカメラ席からファインダー越しに見る興南(沖縄)の左腕エース・宮城大弥(ひろや)の投球フォームには、正直、それほどの迫力を感じない。むしろ「本気で投げているのかな?」と思うほどだ。しかし、レンズを打者に向けると、ベース上を通過するボールのスピードと威力に圧倒されてしまう。

 インステップから放たれるボールの角度、そして十分に体重が乗った最速149キロのストレート。春の九州大会で見せつけた宮城の圧倒的なパフォーマンスを、ただ"圧巻"のひと言で片づけてしまうのはもったいない。だが、ほかに適切な表現が見当たらないもの事実。まさに「言葉にならない」投球だった。

昨年夏の甲子園でも活躍した興南の宮城大弥昨年夏の甲子園でも活躍した興南の宮城大弥 神村学園(鹿児島)との初戦は完投し、133球を投げて6安打、4失点に抑えた。本人も決して納得のいく内容ではなかったが、自己最速を更新しながら代名詞の奪三振も2ケタの10個を記録。

「高校日本代表候補合宿を経験したことで速い球を求めすぎている。力みすぎだよ」と興南の我喜屋優監督は手厳しかったが、次戦の昨年秋に敗れた筑陽学園(福岡)との試合での宮城は、まさに無双だった。

「一度負けている相手だったし、あの負けで(センバツ)甲子園を逃している。冬の間も筑陽学園戦のことは、ずっと頭の片隅にありました」(宮城)

 この試合、「4番・センター」でスタートした宮城だったが、先発左腕の又吉航瑶(こうよう)が0-1と1点ビハインドの6回に無死三塁のピンチを招き、2番の弥富紘介を1ボール2ストライクと追い込んだところで宮城がマウンドに上がった。我喜屋監督がこの場面を振り返る。

「2点目を取られてしまうとまずい。もう1点も許されない場面。宮城で三振を取りにいくしかなかった」

 宮は2つのボールを挟んだあと、外へ鋭く逃げていくスライダーで空振り三振。続く3番の福島悠介もストレートで三振に仕留めると、4番・福岡大真は力で押してレフトフライ。絶体絶命のピンチを圧倒的なピッチングで切り抜けると、4イニングを被安打0、奪三振8の好投でチームの逆転勝利を呼び込んだ。

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