2019.05.05

東都2部の歴代安打記録を更新。
国士舘大の稀有なヒットマンは何者か

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Kikuchi Takahiro

 府中市民球場の数少ない観衆は、頭上から降り注ぐ雨をさけるように屋根のあるバックネット裏上段へと席を移した。

 一・三塁側スタンドには控え部員やブラスバンドによる応援こそあるものの、球場全体の観衆は100人いるかどうか。そんな閑散とした雰囲気のなか、国士舘大の高部瑛斗(たかべ・あきと)は大記録に肩を並べた。

東都2部リーグで歴代最多安打記録を更新した国士舘大の高部瑛斗 2打席連続で泳ぎながら変化球を拾って左中間に落とす二塁打を放ち、迎えた3打席目。高部はストレートを逆らわずに弾き返して、サードの右横を抜いた。

 このヒットは、高部が放った大学リーグ通算109本目の安打。それと同時に、東都大学2部リーグの、確認しうるなかでの歴代最多記録に並ぶ安打だった。これまでは阪神に在籍する陽川尚将が東京農業大時代に記録した109安打が、東都2部の最多記録とされていた。だが、そのことを高部は知らなかった。

「そうなんですね……」

 4月24日、専修大との2回戦を競り勝った試合後、高部は淡々としていた。まだ4年春のリーグ戦の半ばということもあり、通過点という意識が強いのだろう。

 たとえ高部が東都1部リーグの歴代最多記録の133本(中央大・藤波行雄/元中日)を超えたとしても、「2部」としての記録にしかならない。2部での記録を伸ばすということは、皮肉にも国士舘大が2部にいる時間が長くなることを意味する。

「基本的に2部は注目されません。でも、1部に上がるためにやっていますし、モチベーションは高く保っています。2部にいることをネガティブではなく、ポジティブにとらえています」

 東都大学リーグはそのレベルの高さと競争の激しさから「戦国東都」と呼ばれる。現在は東洋大、亜細亜大、國學院大、中央大、駒澤大、立正大が1部に所属。2部は青山学院大、日本大、国士舘大、専修大、拓殖大、東京農業大の6チーム。かつては春の1部優勝校が秋には最下位となり、入替戦に敗れて2部転落……という例もあった。