佐々木朗希の投球は「世界が違う」。
最速163キロで変化球も一級品

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 もう、投球練習で1球投げただけで、世界が違って見えた。

 見慣れているはずの18.44メートルが、なぜこんなにも短く感じるのだろうか。佐々木朗希(大船渡)が1球投げ込むたびに、「そんなに近くから投げたらキャッチャーが危ないじゃないか」と感じてしまう。身長190センチ、体重86キロの体が、マウンドで数字以上に大きく見える。

 岩手が生んだ菊池雄星(マリナーズ)も大谷翔平(エンゼルス)も、しなやかさと強さを併せ持った怪物だった。だが、佐々木は違う。どちらかとえばフォームはぎこちなく、硬さも感じられる。それでも、ひとたびボールがリリースされれば、そんなことはどうでもよくなる。

 圧倒的な強さ。それが佐々木のボールを支配している。

高校生史上最速の163キロをマークした大船渡・佐々木朗希高校生史上最速の163キロをマークした大船渡・佐々木朗希 この日、バックネット裏のプロ野球スカウトのスピードガンは、最速163キロを計測したという。もちろん、スピード表示はわかりやすい指標なのだが、佐々木の圧倒的なストレートの価値を「163」という数字に落とし込んでしまうのは、あまりにも野暮に感じられてしまう。

 佐々木の破壊的な剛球が捕手のミットに収まった瞬間、私も私の近くで見守っていた人も、「ぷっ!」と吹き出してしまった。人間はあまりに驚きすぎると、笑いがこみ上げてくるということを佐々木のボールは教えてくれる。

 奈良県内で行なわれた高校日本代表候補の国際大会対策研修合宿は、非常に有意義な試みだった。高校球界を代表する30名あまりの選手が一堂に会し、お互いに刺激を受け合いながら国際大会に向けて準備する。

 3月6日の練習日には9イニング制の紅白戦が2試合行なわれ、奥川恭伸(星稜)、及川雅貴(横浜)、西純也(創志学園)といったプロ注目選手が次から次へと登場した。なかには大型遊撃手の紅林弘太郎(駿河総合)のように、高い能力を秘めながら全国舞台を経験したことがない有望選手にとって自分の実力を知る格好の機会になった。

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