野村祐輔らが明かす、しびれる3年間。
広陵OBは修行を経て成長する

  • 元永知宏●取材・文 text by Motonaga Tomohiro
  • photo by Kyodo News

星稜戦のコールド負けも「いい経験」

 今秋、11年ぶりに中国大会を制し、神宮球場に乗り込んだ広陵(広島)にとって、明治神宮大会は悔しい結果になった。大会ナンバーワン投手で、来年のドラフトの目玉と目される星稜(石川)の奥川恭伸に11三振を奪われ、3安打完封。守備でも初回からエラーが続出し、0-9で7回コールド負けを喫した。

 しかし、2度の全国優勝経験を持つ中井哲之監督は、屈辱的な敗退にもサバサバした様子だった。

「中国大会で勝つために西純矢くん(創志学園)の真っ直ぐを打つ練習をしてきたので、ストレートには対応できたんですが、131キロのフォークボールを投げられては......。現時点ではお手上げです。奥川くんは変化球でストライクを取れる。ボールの速さでは西くん、ピッチングの精度では奥川くんが上でしょうね」

 しかし、すぐにこう続けた。

「こういうピッチャーを打たないと全国では勝てない。接戦で負けるよりも、いい体験になったかもしれません。広陵が全国大会でコールド負けしたということをよく考え、『あの負けがあったからセンバツに勝てた』と言えるようにしたい。選手たちとコミュニケーションをとって、一日一日を大事にしたいです」

 確実視される来春のセンバツ出場に向けてチームの立て直しを誓った。「奥川対策」を練ったうえで、甲子園に戻ってくるはずだ。

中井監督が「3年間は男の修行」と語る厳しい生活

 甲子園出場が義務づけられる強豪校のなかでも、広陵野球部の練習はとくに厳しいことで知られている。まとまった休日は正月休みだけ。学校の敷地から出ることはほとんどなく、選手たちは教室、グラウンド、寮を行き来する生活を送る。100人を超える部員が、ベンチ入りの20人(甲子園では18人)を目指して切磋琢磨している。

広島大会の決勝でサヨナラ勝ちを収め、今夏の甲子園に出場した広陵の選手たち広島大会の決勝でサヨナラ勝ちを収め、今夏の甲子園に出場した広陵の選手たち 中井監督はこう言う。

「高校3年間は、修行でいいんじゃないですか。今しかできないことが、いずれ役に立つと思います。うちで修行したら人間としても成長できる。高校を卒業してから野球を続けない子も、違う分野で活躍しています。

 大好きな野球を通じて、どこに行っても耐えられる力をつけさせたい。甲子園という大きな目標があって、そこに向かって歯を食いしばって頑張ることで生きる力がつく。こんなにいいスポーツはないと思います」

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