花咲徳栄・野村佑希はマン振りせず
58本塁打。仰天練習で体力強化した

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 近年、当たり前のように使われるようになった"マン振り"。この言葉が、定着したのはいつのことだろう。フルスイングが代名詞のホームランバッターの特権のような言葉だが、花咲徳栄・野村佑希の辞書にこの4文字はない。

昨年の夏に続き、今夏の甲子園でも2本塁打を放った花咲徳栄・野村佑希昨年の夏に続き、今夏の甲子園でも2本塁打を放った花咲徳栄・野村佑希「試合のなかで思いっきりフルスイングというのはしないです。率を求めてやってきたので。まずは芯に当てることを意識しているんですけど、それでホームランが出るようになりました。だからマン振りはしないです」

 これは打者目線での考え方。さらに、投手目線の考え方もつけ加えた。

「ピッチャーをやっていると、マン振りするバッターは楽なんです」

 花咲徳栄には、投手として入学した野村。

「バッターはまったくやる気なかった。ピッチャーがダメだったらバッターをやろう......というぐらいでした」

 体が大きいため当たると飛ぶが、確率が低い。三振かホームランかの典型的な"マン振り打者"になってもおかしくなかった。

 だが、岩井隆監督はそんな打者は必要とせず、確率を求めた。正面から内外角にトスを上げてもらい、バットの芯に当てる練習から始めた。トスから始まり、9メートル程度のハーフ打撃と徐々に距離を伸ばしていきながら、芯に当てる打撃を磨いていった。

「(緩い球なので)ファウルはありえないという感じでしたね。追い込む時は、『ファウル打ったらグラウンドを走ってこい』と。そうやっていくうちに、芯に当たらなかった球に対して、1球1球、なんで打てなかったか考えるようになりました」

 調子が悪い時は、左足を上げた時に右肩が下がって目線が変わってしまう。チェックポイントが明確になったことで、修正しやすくなった。タイミングの取り方も下手だったが、構えてただ左足を上げるだけだったのを、体を動かしながら動きのなかで左足をチョンと上げるように変更した。

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