スカウト注目の75本塁打男は、3つの見えない武器を売りにプロで勝負 (3ページ目)

  • 田尻賢誉●文 text by Tajiri Masataka
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 空振りしたくてもできない、とはまるでイチローのような言葉だが、それぐらいバットに当てるうまさがあるということ。ボールの球筋をイメージし、バットをラインに入れることができるということ。

 しかも当てにいくのではなく、しっかりスイングする。お世辞抜きで、高校生ではトップレベルであることは間違いない。

 左打者、三振しない、長打力がある、俊足と揃えば、メジャーリーグでトレンドになっている攻撃的2番打者にうってつけの素材だと言える。将来について、山下はこう言う。

「ミートする力、バットに当てる力は、ほかの人よりすぐれている部分だと思うので売りにしていきたい。そのうえで、トリプルスリーを目指したいです。ホームラン王とかは人と競うものですけど、トリプルスリーは自分との戦いじゃないですか。だからやってみたい」

 ひとつのものを突き詰めるのが山下の性格だ。他人と争うのではなく、自分との勝負をする方が合っている。確実性、長打力、そしてスピード。それぞれを探求して、少しでも上を目指し、きのうの自分を上回るために、日々、考える。

 失敗しても、「この方法はダメだとわかった。じゃあ、別のやり方を試してみよう」と実行できるのが山下。数字や見た目、派手なプレーばかりに目を奪われがちなドラフトにあって、ほかの選手たちにはない最大の長所が山下にはある。観察眼、気づき、そして工夫。見えない武器を売り物に、上の世界で勝負する。

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