自己採点30点で14奪三振。金足農・吉田の直球は強烈にキレる

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 試合前の10分間で、「この投手は本物だ」と確信した。

「投低打高」と言われる今夏の甲子園で、大会前から「ナンバーワン投手」と評判になっていたのが、金足農(秋田)の右腕・吉田輝星(こうせい)だった。

鹿児島実戰で14奪三振を記録した金足農のエース・吉田輝星鹿児島実戰で14奪三振を記録した金足農のエース・吉田輝星 甲子園大会では、試合開始前に報道陣に各チーム10分間の取材時間が設けられる。金足農対鹿児島実の試合前、吉田は鈴なりの報道陣を前にして堂々と自身の投球論を語ってくれた。聞いていて、おっと思わされた言葉をいくつかピックアップしてみたい。

「(秋田大会で)150キロは出ましたけど、球質は死んでいたので、球質の伴った球速を求めたいです」

「(調子のバロメーターを聞かれ)ボールの回転がきれいかどうかと、体重が前足(左足)に乗れているかどうかです。回転は音も大きいかどうかを気にします。まずリリースで『パチッ!』と音がして、扇風機みたいに『シーッ!』と風が吹くような音が鳴ればいいときです。悪いときはボールの縫い目にしっかり指が掛からなくて、『ゴー!』と汚い回転音になります」

「三振ばかりだと球数が多くなりますし、攻撃にいい流れがいきません。2ストライクに追い込むまでは打たせて取ることを考えています。追い込んだらしょうがないので、三振を狙います」

 誰が見てもいい投手なのは間違いない。そして、吉田はただ能力が高いだけでなく、思考力もある。短い取材時間とはいえ、それはすぐに伝わってきた。

 身長176センチ、体重81キロ。上背に恵まれているわけではないが、スピンの効いたストレートにカーブ、スライダー、カットボール、ツーシーム、チェンジアップ、スプリットと多彩な変化球を操る。そして吉田が評価される最大の理由は、その投球センスにある。

 打者の顔色や大局を読みながらクレバーに試合をコントロールして、牽制球、フィールディングも抜群にうまい。そんな投球スタイルから、「桑田真澄2世」と評するメディアもあった。吉田は「桑田さんの足元にも及びません」と苦笑しつつも、桑田の高校時代の映像を見て参考にしているという。

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