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5年前の再現なるか。前橋育英が
谷間の世代で当時と同じ匂いがする (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 守って流れを呼び込み、攻撃に生かす。そんな守備と攻撃が地続きになった「攻撃的守備」こそ、前橋育英の真骨頂なのだ。

 8月7日の甲子園初戦・近大付戦でも、随所に攻撃的守備が見られた。たとえば2回裏、無死一、二塁でのピンチの場面。相手打者のバントを捕球したファーストの橋本健汰は、迷わず三塁に送球。フォースアウトで進塁を阻止して、相手の流れを食い止めた。

 この橋本は、今夏に初めて戦力になった選手だった。投手として入部したが、1年時にヒザを故障して手術。さらに復帰後は右ヒジ痛に悩まされ、長いリハビリ生活を送った。高校3年の5月中旬、橋本は野手転向を決意し、死に物狂いでレギュラー獲得を目指したという。

「もう焦りしかありませんでした。自主練習を含めて、他の人よりもバットを振っていたと思います。残り少ない練習試合で何とか結果を出せたので、ファーストで使ってもらえるようになりました」

 チームメイトたちも、橋本の努力を見ていた。主将の北原は言う。

「ケガをしてリハビリ中から、橋本は僕らが見ていないところで努力できるヤツでした。自分たちが練習を終えても、橋本はエアロバイクを懸命に漕(こ)いでいたり。野手に転向した後も、橋本は誰よりも高い意識で積極的に自主練習をしていました。彼が打線に入ってくれたことで、チーム力は確実に上がりました」

 近大付を完封したエースの恩田にしても、入部当初は内野手だった。「1学年上の先輩方はみんなすごくて圧倒されました」という172センチ60キロの小柄な投手が、着実に力をつけて2年秋からエースに。現在は最速145キロを計測し、正確なコントロールで打たせて取る投球をする。

 ショートの北原を中心とした守備力も、夏の勝利を挙げるたびにたくましさを増している。北原は2013年の優勝チームのショート・土谷恵介(現・鷺宮製作所)を憧れの選手に挙げる。

「自分たちの代はあの全国制覇を見て入った部員も多いので。土谷さんみたいなプレーができるショートになりたいんです」

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