今井達也が振り返るあの夏の熱投「投手で日本一になった実感はない」
【短期連載】夏の甲子園「優勝投手」インタビュー~今井達也編
2016年夏の甲子園は、大会前から横浜の藤平尚真(現・楽天)、履正社の寺島成輝(現・ヤクルト)、花咲徳栄の高橋昂也(現・広島)の"ビッグ3"に大きな注目が集まっていた。しかし大会が始まると、彼らよりもひとりの投手に視線が注がれていった。それが作新学院のエース・今井達也だ。
今井は初戦の尽誠学園戦で最速151キロをマークし完封すると、その後も150キロ台を連発。ネット裏のスカウトたちを驚かせた。チームも快進撃を続け、決勝戦では北海に7-1と勝利。54年ぶりの全国制覇を成し遂げた。一躍スターダムへと駆け上がったあの夏を、今井が振り返る。
2016年夏、エース・今井達也の奮闘もあり、58年ぶりの全国制覇を達成した作新学院―― 今井投手が子どもの頃からずっとやってきて、今につながっていると思う練習は何だと思いますか。
「それは......遠投ですね。小っちゃい頃、誰がボールを一番遠くまで投げられるかってことを遊びでやってましたし、放課後、家に帰ってからすぐ、バットとボールとグローブを持って、小学校のグラウンドで野球やってました。最近は家にこもってゲームする子どもが多いって聞きますけど、僕はヒマさえあれば野球やってましたね」
―― 遠投ですか......作新学院の大先輩(江川卓さん)みたいですね(笑)。
「へーっ、そうなんですか」
―― 江川さんが子どもの頃、100メートルを越える川幅の川で、ちょうどいい大きさの石を探して遠投して......それで地肩を鍛えたという話は有名です。
「えーっ、小学生で100メートルを投げるって、すごいですね」
―― 今井投手は子どもの頃から甲子園、プロ野球選手が目標だったんですか。
「いえ、どっちかと言えば、興味はなかったと思います。作新学院にも行くつもりはなかったし......僕には子どもの頃からずっと一緒に野球をやってきた2つ上の兄がいて、地元の県立の今市工で野球をやっていたんです。そこに入れば3年と1年でギリギリ、一緒に野球ができましたから、僕も今市工へ行くつもりでした。それを兄が止めたんです。『お前はもっと高いレベルで野球をやれ』って......おそらく兄は、レベルの高いところでやらなければ、伸びるものも伸びないと思ってくれたと思うんです」
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