2度目の春夏連覇へ。大阪桐蔭の名将は
考えぬいた最高の準備をしていた!

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 岡沢克郎●写真 photo by Okazawa Katsuro

 今日7月7日から南・北大阪大会が開幕するが、その少し前、大阪桐蔭西谷浩一監督のもとを訪ねた。すると「いやぁ、ほんと大変ですよ」と、ため息まじりにそう漏らした。その反応を見て、思わず今年のセンバツ直前の厳しい表情を思い出した。

 公にはなっていなかったが、センバツ直前の沖縄遠征で根尾昂(ねお・あきら)が右手中指を裂傷。打つだけでなく、投手としてもチームの中心を担っていた根尾の負傷に、西谷監督は「どうやってピッチャーを回していくか......頭が痛いです」と語っていた。

 しかし今回は、表情に明るさがあった。西谷監督が言う"大変"とはチームのことではなく、殺到する取材への対応を指してのものだった。

今年春のセンバツを制し、史上初の2度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭今年春のセンバツを制し、史上初の2度目の春夏連覇に挑む大阪桐蔭 節目となる甲子園100回大会、史上初となる2度目の春夏連覇への挑戦......ましてメンバーには根尾のほかに、藤原恭大(きょうた)や柿木蓮(かきぎ・れん)など、プロ注目の逸材がズラリ。高校野球史上最強チームという声もあり、新聞やネットニュースなどでもかなりの頻度で取り上げられている。

 しかし、この異様な盛り上がりからつくられる空気こそ"要注意"と西谷監督は表情を引き締める。

「『今年は大阪桐蔭だろう』『負けないだろう』というような空気がいちばん怖い。まず北大阪には履正社をはじめ、実力のある学校がたくさんありますし、わずかでも油断があったらやられてしまうのが大阪です。ウチの選手たちは、僕が締めなくても浮ついたり、天狗になることもないですけど、子どもたちに任せきりにはできない。しっかり野球に集中できる環境をつくってあげるのが、僕らの仕事です」

 才能豊かな選手たちが、「まだまだ」とさらなる高みを目指し、常に危機感を持ち続けたからこそ、今の大阪桐蔭の強さがある。そのための環境づくりは西谷監督の得意とするところだ。

 センバツ優勝後の歩みにも、随所に西谷監督らしい"工夫"があった。

 たとえば5月27日、近畿大会開催中に東京まで遠征に行き、日体大と練習試合を行なったのは最たるものだ。

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