駒大苫小牧→苫小牧駒大の快腕あらわる。
2年後のドラフトで争奪戦へ
東北福祉大の優勝で幕を閉じた大学野球選手権。全国の精鋭たちが集結するこの大会には、毎年必ずといっていいほど「あっ!」と驚く逸材が眠っている。苫小牧駒大の伊藤大海(ひろみ/2年)もそのひとりだ。
噂には聞いていたが、これほどとは――。伊藤の初回のピッチングを見て、間違いなく本物の逸材ということはわかった。
6月12日、全日本大学野球選手権2日目。神宮球場のマウンドに立った伊藤は、自己最速の154キロには及ばなかったものの、151キロをマーク。縦に鋭く落ちるスライダーに、手元で横に滑るカットボールを駆使して、日本文理大から10奪三振をマーク。派手な大学全国デビューを飾った。日本文理大戦で10奪三振をマークするなど、チームの全国大会初勝利に貢献した伊藤大海 伊藤の投球に驚くと同時に不思議な感覚があった。「自分が知っている伊藤じゃないみたい」。それが偽らざる本音だった。
5年前の秋、伊藤は神宮球場のマウンドに立っていた。当時は「苫小牧駒大」の選手ではなく、学校名の上下をひっくり返した「駒大苫小牧」の選手、つまり高校生だった。高校1年秋の明治神宮大会、沖縄尚学との初戦に伊藤は登板している。
当時の体のサイズは身長173センチ、体重67キロ。ストレートは常時130キロ台前半で、投球センスのある投手という印象ではあったが、プロを意識させるような片鱗は見えなかった。もっと言えば、将来150キロを超えるという想像すらできなかった。あれから5年が経ち、同一人物とは思えない伊藤がマウンドに立っていた。
5年前も今年も、受ける捕手は変わっていない。駒大苫小牧、苫小牧駒大を通じて正捕手を務める新山敬太(4年)は言う。
「伊藤が5年前と変化したところですか? それは、求めているものをくれるピッチャーになった......ということですね。もともと負けん気が強くて、自分が投げたいボールとは違う球種のサインが出ると態度に出るんです(笑)。でも、強制的にサインに従わせても、投げるボールにはムラがありません。もう、打たれたら僕の責任です」
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