あの北大医学部サウスポーが「プロ挑戦は今年が最後」という背水の陣 (2ページ目)

  • 井上幸太●文・写真 text & photo by Inoue Kota

 苦笑しながら、当時の心境を振り返る。昨シーズンは33試合に登板し、1勝6敗2セーブ、防御率3.58。結果を残せたとは言い難い内容という自覚も当然ある。

 ドラフトが近づいても、NPB球団が獲得の可能性を伝える調査書は手元に届かず、スーツを着て会見場の最前列に座る"スーツ組"には加わることができなかった。自身は練習用のウェアに身を包み、指名を心待ちにするチームメイトを見守ることしかできない歯痒さも経験した。
 
 そんな雌伏(しふく)の時を過ごした独立リーグ1年目。登板を重ねるなかで、強く感じたのが「メンタル面の弱さ」だったという。

「ここで打たれたらどうしよう、という気持ちが強すぎて厳しいコースを狙う。腕を振りきれず、コースも攻めきれない。結局、四球を出す......。すぐ弱気になってしまい、打者に対してまったく"上"に立つことができませんでした」
 
 シーズンを戦うなかで浮き彫りになった精神面の課題。通常であれば、メンタルトレーニングに取り組むところだが、三木田の考えは異なるものだった。

「メンタル面の弱さを自覚した上で、身体を強化する、心技体の"体"の部分を鍛えようと考えました。身体を大きくして球威を上げれば、少々コースが甘くても打者を押し込める。ピンチの場面、不利なカウントを迎えた状況で、『ストライクゾーンで勝負すればOK』と考えることができれば、精神的にグッと楽になると思ったんです」

 このオフは徹底的なウエイトトレーニングと摂取する栄養の見直しを行ない、約8キロの体重増加を果たした。「何かを変えなければ」という気持ちは強かったが、決してやみくもに取り組んだわけではなく、大学野球引退後のクラブチーム(ウイン北広島)時代に得た、ひとつの経験則も背景にあった。

「クラブチーム時代、チーム全体での練習が少なかった分、自主的にウエイトトレーニングに取り組んでいたんです。その時は知識も乏(とぼ)しく、決して効率的とはいえないやり方でしたが、ピッチングに好影響があった。正しい方法で計画的に取り組めば、間違いなくプラスになると思いました」

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