2018.05.15

あの北大医学部サウスポーが
「プロ挑戦は今年が最後」という背水の陣

  • 井上幸太●文・写真 text & photo by Inoue Kota

「今日はよろしくお願いします。次のトレーニングが終わったら、すぐ行きますので」

 少し日に焼けた青年は、慣れた様子でこう述べて、颯爽とトレーニング場へと向かっていった。青年の名は三木田龍元(みきた・りゅうげん)。2017年、四国アイランドリーグplusの香川オリーブガイナーズに入団し、今季2年目を迎える左投手だ。

 挨拶を交わしただけでも、”取材慣れ”していることが伝わってきた。それもそのはず、昨シーズンの開幕前、三木田はアイランドリーグの”主役”だったからだ。

北大医学部出身の左腕、香川オリーブガイナーズの三木田龍元 小樽潮陵高(北海道)を卒業後は、”道内最高学府”である北海道大へ。医学部保健学科で学び、卒業時には作業療法士の国家試験に合格。

 さらには在学中に「ふと書店で対策テキストが目に入り、興味が湧いて」と、合格率5%未満の難関資格である気象予報士の試験も突破した。

 卒業後は北海道大の大学院に進もうと考えていたが、自身の成長の手応えと、合うランドリーグのトライアウト受験時にリーグ関係者から「本気でやればNPBを目指せる」と熱心なアプローチを受けたことから、挑戦を決意した。

 野球選手としては異色のエピソードを数多く持つ三木田を、メディアが放っておくはずがない。「北大医学部出身のインテリ左腕」。このフレーズとともに、地元だけでなく、全国メディアでも取り上げられた。

「『学歴や来歴ではなく、野球の実力で取り上げられたい』という気持ちは当時から強く持っていました。でも、高校、大学では全国大会に行けていないですし、自分が歩んできたのは”日陰”の野球人生。野球以外の部分で取り上げられる違和感がある半面、取材してもらえることは嬉しくもありました」

 こうして幕を開けた独立リーグ生活だったが、シーズンに入ると、開幕前の喧騒が嘘のようにパタリと止む。シーズン終盤には、テレビ局から約3日間の密着取材を受けるも、放送当日の番組に三木田の姿は一切登場せず。別日程で追加取材を受けたチームメイトの映像に差し替えられる悔しさも味わった。

「すべての原因は、期待していただきながらも結果を残せなかった自分。でも、あれは悔しかったですね」