2018.04.30

あの「人的補償」の元チームメイト
に続け。月給10万円から挑むプロ

  • 石田雄太●文 text by Ishida Yuta
  • 市川光治(光スタジオ)●写真 photo by Ichikawa Mitsuharu(Hikaru Studio)

 子どもの頃、周りの誰よりも野球がうまかった。

 町で一番、小学校でも一番。中学校でも誰よりも目立って、高校時代は甲子園にも近づいた。それでも、高校生でNPBのドラフトにかかるのは至難の業だ。とはいえ、もうちょっと頑張れば、もしかしたらプロ野球選手になれるかもしれない……そう思ったら、高校まででは野球をやめられなくなる。

 ならば、大学か社会人で野球を続けようと決断する。ただし、次のステップへの門戸が開かれる選手は限られる。門が開くなら、もちろん進む。開かなければ、野球をあきらめるしかなくなる。

昨年、BCリーグの石川ミリオンスターズに入団した神谷塁 プロを目指すアマチュアの選手たちは、NPBの12球団からドラフトで指名されることを待ち望んでいる。希望球団から上位で指名されれば、万々歳。支配下選手としてなら下位指名でもよしとする。もちろん、育成枠でも構わないという選手もいる。

 しかし、ここでは、プロ野球選手がプロ野球選手を目指している。

 石川県金沢市――江戸時代、加賀藩の前田家が治めた”加賀百万石”の城下町である。ここを本拠地とする石川ミリオンスターズのチーム名は、この百万(ミリオン)にちなんでいる。

 ミリオンスターズは、2007年に設立された日本で2番目の独立リーグ、ルートインBCリーグに所属する、れっきとしたプロ野球の球団だ。BCリーグの初代優勝チームであり、リーグで初めてNPBに育成選手を送り出した球団でもある。去年は、NPBの支配下登録に独立リーグとして初めて、3人の選手を送り出した。こうなってくると、NPBのドラフトにかからなかった高校生にとって、目標を達成するための道筋は、大学、社会人の他に、独立リーグという選択肢も現実味を帯びてくる。

 ミリオンスターズに、神谷塁という選手がいる。

 彼もまた、俊足と強肩を武器に、NPBの球団からドラフトで指名されることを目指している。今シーズンの開幕戦ではセンターを守ったが、セカンド、サード、ショートも守れる、万能型のプレーヤーである。神谷が言う。

「NPBに行くためには、バッティングが課題だと思ってます。打てないと塁にも出られないし、出塁できなければ持ち味のスピードも生かせません。ピッチャーに負けないようなスイングスピードを身につけるために、今はボールを身体の中まで呼び込んで、ちっこいながらも身体を全部使った、ダーンと打つようなイメージのバッティングを意識しています」