2018.04.29

なんとPL学園野球部にまだ逸材がいた。
凄腕のキャッチャーは何者か

  • 菊地高弘●文・写真 text&photo by Kikuchi Takahiro

 PL学園に素晴らしいキャッチャーがいますよ──。

 そんな情報を耳にしたのは、昨年の秋頃だった。

 すでに広く知られているように、PL学園の硬式野球部は2016年夏を最後に休部している。部内暴力などの不祥事が相次いだとはいえ、春夏合わせて甲子園優勝7回、甲子園通算96勝という名門の休部という事態に、球界には激震が走った。

 そんな埋めがたい喪失感が残るなか、もたらされた「PL学園のすごいキャッチャー」情報。提供してくれた方には失礼ながら、亡霊でも見たのではないかと思ってしまった。

 しかし、よくよく聞いてみると、意外なことがわかった。そのPL学園の捕手とは、軟式野球部の選手なのだ。

 選手の名前は相曽轄也(あいそ・かつや)という。

実質、プレーイングマネージャーとしてチームを牽引する相曽轄也

 3月下旬、少し気の早い桜が咲き誇り、甲子園球場では春のセンバツ大会が華々しく開催されていた。そんな時期に、大阪・富田林のPL学園軟式野球部グラウンドを訪ねてみた。

 グラウンドが近づくにつれ、15人ほどの選手たちがティーバッティングをしている姿が見えてきた。驚いたのは「コーン!」という乾いた打球音が聞こえてきたことだ。明らかに硬式球をバットで叩いている。

「遠征で出た課題を克服するために、硬球を打って練習しているんです」

 軟式野球部の斉藤大仁監督が言う。自身もPL学園軟式野球部出身で、30年以上も監督を務めるベテランである。

「相曽は硬式野球部が休部にならなければ、硬式でやりたかった子ですからね。私は相曽が高校に入学してから見ましたが、パワーは最初からありましたよ」

 硬式球に比べて飛びにくいとされる軟式球で、相曽は高校3年生になる直前までに5本のサク越えホームランを放っている。そして、何よりの武器は強肩だ。遠投の距離は100メートルを超え、その二塁送球を見て相手チームが盗塁を尻込みするほどだという。

 硬式野球には硬式野球の面白さ、軟式野球には軟式野球の面白さがある。別の競技であり、優劣をつけるのはナンセンスである。