あえて関西のマイナー大学を選んだ男が「低い構え」でドラフトを待つ

  • 谷上史朗●文 text by Tanigami Shiro
  • 大友良行●写真 photo by Ohtomo Yoshiyuki

 9月25日に行なわれた大阪工業大戦で、奈良学園大の左打者・宮本丈(みやもと・たけし)は4回にセンター右へタイムリー三塁打を放った。これが近畿学生リーグ史上5人目となる通算100本目の安打った。

 宮本は昨年6月に行なわれた大学野球選手権大会でライトスタンドへ2発を放り込み、そのうち1本はタイブレイクの決着をつけるサヨナラ満塁弾。この活躍で名が知られることとなり、2017年のドラフト戦線に華々しく浮上した。

近畿学生リーグで3度の首位打者を獲得した奈良学園大の宮本丈近畿学生リーグで3度の首位打者を獲得した奈良学園大の宮本丈 宮本の最大の特長は、攻撃力を備えた遊撃手であるということ。もし、東京六大学リーグや東都大学リーグといった中央リーグで同様の活躍をしていれば、どれほどの注目を集めていただろう。宮本がプレーするのは関西の、それも近畿大や立命館大などがしのぎを削る関西学生リーグでも、大阪体育大や関西国際大などが属する阪神学生リーグでもなく、全国的にマイナーな近畿学生リーグなのだ。

 宮本は自らここでプレーする道を選び、プロ野球選手になるという夢を抱きながら安打を重ねてきた。

 宮本は大阪の強豪・履正社の出身で、山田哲人(ヤクルト)の卒業と入れ替わりで入学した。1年秋からショートのレギュラーとなり、2年春、3年春とセンバツに出場。最後の夏は、大阪大会直前に右手の小指を骨折しメンバーから外れたが、それでも宮本の実力は知られており、関東の有力な大学からいくつか声がかかっていた。

 しかし、宮本が選んだのは奈良学園大だった。奈良学園大の酒井真二監督も「関東の大学でバリバリやれるレベルの選手だった」と当時を振り返る。

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