桐光学園・松井裕樹、苦しみながら手にした大きすぎる1勝 (3ページ目)
それにしても相洋戦で驚かされたのは、捕手・田中幸城(たなか・こうき)の立ち居振る舞いだった。今春までは主将で松井と青葉緑東シニア時代からコンビを組む鈴木航介が正捕手だったが、野呂監督は大事な初戦を経験の少ない1年生捕手に託した。本人によれば遠投は「60mぐらい」と肩に自信はないものの、田中は松井からリードを一任されるほど信頼が厚く、同点にされた場面では「しっかりしろ」と松井の頬をつねって落ち着かせ、9回一死満塁のピンチではマウンドに足を運び、田中が松井の肩を抱き寄せこう伝えた。
「リラックスしていこう」
まさかのタメ語である。そういえば、昨年夏、松井も先輩捕手らに物怖じしない発言を繰り返しており、チームの結束力の強さをうかがわせた。とにかくこうした新戦力の台頭は、全国制覇に向けて桐光学園の底力が高まっている証拠であろう。
松井は言う。
「どこよりも苦しい初戦をとったと思う。この戦いはこの先、必ず生きてくる」
松井率いる桐光学園の次戦は7月17日、相手は上矢部高校である。
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