苦節9年。黒田博樹も認めた男・會澤翼が正捕手になるまで

  • 前原淳●文 text by Maehara Jun
  • 小池義弘●写真 photo by Koike Yoshihiro

 2006年の高校生ドラフトで広島から3巡目指名を受け入団した會澤翼(あいざわ・つばさ)。入団9年目を迎える會澤が「今年が勝負」と位置づけた2015年シーズン、広島の新たな正捕手として奮闘している。ここまで消化した53試合のうち35試合に出場し、スタメンマスクは31試合。ディフェンスの技術向上はもちろん、近年、日本球界で求められている「打てる捕手」であることが大きい。

9年目にして初めて開幕スタメンを果たした広島・會澤翼9年目にして初めて開幕スタメンを果たした広島・會澤翼

 會澤が正捕手奪取のきっかけを掴んだのは昨年。長く広島の正捕手を争ってきた石原慶幸と倉義和の負傷離脱によりチャンスを得ると、持ち前の打力を発揮し、石原が戦列に復帰したオールスター後もスタメンでマスクを被った。自己最多の65試合に出場し、捕手として球団史上4人目となる2ケタ本塁打を記録。打率も規定打席未到達ながら3割をマークした。

「正捕手を獲る」――そう決意した今季、背番号が「64」から「27」に変わったことからも期待の大きさがうかがえる。開幕マスクの座を勝ち取ると、5月には3本塁打を放つなど結果を残し、その後も攻守に存在感を示している。

 経験がものを言うポジションで、會澤は雑草のように何度も這い上がってきた。スポーツ界で「たら・れば」は厳禁だが、會澤はもっと早くに正捕手を取っていても不思議ではなかった。

 會澤はプロ野球選手の最初の晴れ舞台である入団会見に、あご髭をたくわえ、ボンタンに短ランという出で立ちで登場。壇上には、大学・社会人ドラフトで指名された4選手と、會澤と同じ高校生ドラフトで1巡目指名を受けた前田健太がいた。野球での注目度は他の選手に劣るため、「少しでも目立てればと思ってやった」という狙い通りのインパクトを与えた。

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