苦節9年。黒田博樹も認めた男・會澤翼が正捕手になるまで (3ページ目)
そしてもうひとつ、會澤が取り組んだのが配球面。対戦相手の情報をノートに書き留めることで頭の中を整理した。
「どこにいても野球のことばかり考えてしまうようになりました。それなら、とことん考えようと……」
CS放送などで中継されている他球団の試合を録画し、試合が終わったあと確認するようになった。
そんな會澤にとって、最も大きな存在になっているのが8年ぶりにチームに復帰した黒田博樹だ。
「あれだけ成績を残された方でも、打者をいかに抑えるかをすごく考えている。投球に対する考え方がすごい」
3月29日のヤクルト戦、黒田の日本復帰初戦でマスクを被った會澤は、伝家の宝刀であるツーシームではなく、スライダーとカーブ中心の配球で挑んだ。その結果、7回を5安打、無失点に抑える好投を演出。黒田の復帰戦初勝利に貢献した。黒田は言う。
「ずっとスライダーの調子が悪かったけど、その球を使わないと的を絞られてしまう。悪いボールも使っていかないと長いイニングは投げられないですし、抑えることはできません。その中で會澤が本当にうまくリードしてくれました」
何度も挫折から這い上がってきたからこそ、今がある。今季ここまで(6月3日現在)打率.263、3本塁打、14打点をマーク。期待の若手であれば十分かもしれないが、正捕手を狙う立場であれば物足りない。前評判に反して、広島は最下位に低迷している。誰より悔しさを感じているのは、會澤だろう。
これまでがそうだったように、この悔しさをバネにまた一歩ずつ進んでいくしかない。誰もが認める正捕手へ、會澤の戦いはまだまだ続く。
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