ヤクルト連覇を支えた名脇役の成長秘話。山崎晃大朗の「献身力」と奥村展征の「声」はチームに勇気を与え、勝利へと導いた (5ページ目)
今シーズン、石井コーチはベイスターズの指導者として最後までヤクルトを苦しめた。かつての教え子たちの姿は、反対側のベンチからどう映っていたのだろうか。
山崎は優勝前日の試合で先制タイムリーを含む4安打の活躍を見せた。
「余計なことをしてますね(笑)。今年はモデルチェンジじゃないですけど、バットを短く持つことで、彼本来の足を生かしたバッティングができている印象があります。それも当てにいくようなバッティングではない。バットを短く持っている分、コンタクト率も上がっている気がします。そのなかで長打も打てている。コータローとは離れて3年になりますが、一番成長を感じるのは、僕が言ったらおこがましいですが、打席のなかで粘りが出てきたことですね。僕がいた頃は、ベース盤の上にフォークを投げられるとクルクル回っていて、そこが課題でしたから」
奥村については「ノブ(奥村の愛称)はうるさいだけ。僕がいた時から声だけ(笑)」と目尻を下げた。
「声も戦力と言われますけど、コロナ禍でスタンドの声援がないから、ベンチからの声は本当によく聞こえます。ヤクルトのなかでは、ノブと嶋がよく声を出していました。もともと向上心と根性のある子で、10人目の野手としてチームの勝利に貢献していたんじゃないですかね」
ベイスターズはクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージを勝ち上がれば、ヤクルトとの対戦が待っている。
「ヤクルトにはシーズンを通して苦戦を強いられました。これは広島もそうですが、この2チームには野手陣がいつも以上に力んでしまう印象がありました。相手の打線を見てしまい3、4点とらないといけないという焦りが感じられたというか......CSではもう一度、原点にかえって、まずは1点をとりにいくところから始めたいと思っています」
まだ山崎と奥村が若手だった頃、秋季キャンプを目前に「どんな練習が待っているんですかね」(山崎)、「今日、日程が出たんですけど、休みがほとんどないです(笑)」(奥村)と心細げな顔を見せていたのも、今は昔の話だ。
今シーズン、山崎と奥村は東京ヤクルトスワローズという大きな花壇に、"自分だけの花"を見事に咲かせたのだった。
「まだ5分咲きくらいでしょうけどね(笑)」(石井コーチ)
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