ヤクルト連覇を支えた名脇役の成長秘話。山崎晃大朗の「献身力」と奥村展征の「声」はチームに勇気を与え、勝利へと導いた

  • 島村誠也●文・写真 text & photo by Shimamura Seiya

 リーグ連覇が決まった夜、神宮球場ではビールかけが始まろうとしていた。バックスクリーンのビジョンに山崎と奥村の"やる気満々"の顔が大きく映し出された。

「僕にとっては初めての優勝体験でしたが、今までに見たことのない景色がずっと続いて、本当に感動しました。個人としての喜びは去年よりもはるかに強いのですが、まだ99パーセントです。来年はもっともっと上を目指して......残りの1パーセントはまだまだ先にあるのですが、そこを目指していきたいです」

相手ベンチから見た山崎と奥村

『よく考えて練習しないと咲かない花はあります』

 2018年の愛媛・松山での秋季キャンプ。三塁側ベンチの壁にかけられたホワイトボードに、石井琢朗コーチ(当時/現・DeNAコーチ)はこんな言葉を書き込んだ。選手たちはその前で足を止めてからグラウンドへ足を踏み入れた。

 山崎はこのキャンプで、宮本慎也ヘッドコーチ(当時)から練習の大切さ、打席での考え方を教わり、河田雄祐コーチ(当時/現・広島コーチ)からは、自分のすべき仕事を叩き込まれた。

「河田さんに『コータロー(山崎の愛称)、おまえはどう考えてもスターじゃないんだから』と。その言葉で、自分がこの世界で生き残るために、ほかの選手を引き立てる役割を果たしていこうと決めたんです。去年はファームにいる時に、土橋(勝征)コーチからも『ひとりくらいコツコツやる選手がいてもいいんだ。それをおまえがやればいいんだよ』という言葉をかけてもらって、今年はその意識がより強くなりました」

 そう話す山崎にとって、石井コーチからの言葉はもっとも強く胸に響いた。

「3年目はなかなか一軍にいられなかったのですが、ファームから昇格した時、琢朗さんに『下では何をやってきた?』と聞かれたんです。僕が答えると『その考えのままじゃ一軍では通用しないよ』と。自分はその言葉がきっかけになったというか......。今年はようやく宮本さん、琢朗さん、河田さんに教えられたことをちょっとですが、体現できたシーズンになったかなと思っています」

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