【自転車】片山右京「日本人選手をエースに据える意味」 (3ページ目)
今中 講義のような形式ではなくて、たとえば、ご飯を食べながら自然に話をできるようになるのが一番いいんでしょうね。
片山 今中さんの話は、すごくリアルなんですよ。なんといっても尊敬されているから。
今中 尊敬されているかどうかは怪しいけどね(笑)。
片山 うちの若い子に、「今中さんって知ってる?」って聞いたら、「あの自動車好きの人ですね。昔、自転車に乗っていたらしいけど」って言われたりしてね(笑)。俺だって、「お父さんから聞いたけど、片山さんって昔、自動車のレースをやってたんですね」って言われるくらいだから。
――では、最後に2015年のTeamUKYOについて、それぞれひと言ずつお願いします。
片山 まずは、春のツアー・オブ・ジャパンで好成績を残したい。秋のジャパンカップは、今の僕たちにはまだレベルが高すぎて、優勝を狙うと言えるような状態ではないですから。
そしてもうひとつ、絶対に落としちゃいけないのが、Jプロツアーの個人総合とチーム総合の両タイトル。ぶっちぎりで勝って、「日本ではTeamUKYOが名実ともにナンバーワンです」と言えるくらいじゃないと、「プロコンチネンタルを目指します」なんて、とても恥ずかしくて公言できない。だから、スタッフや選手たちにも、「そのために何が必要か、自分で考えてほしい。俺は2年後、3年後に必要となる橋を架けるために、土木工事を続ける。君たちは粛々(しゅくしゅく)と良いレースをして、俺たちやみんなに可能性を見せてくれ」と言っているんです。
今中 そのためには、頑張れる個人がひとりでもふたりでもズバ抜けた状態になってくれることが、2015年は求められると思います。たとえば土井君は、ブエルタ(・ア・エスパーニャ)を走っていたころの状態に自分を作り上げること――。大変な作業ですが、目標があれば、彼ならできると思います。それくらい強い気持ちで臨んで、ズバ抜けて強くなれば、他の選手たちもついてくる。スペインからも強力な選手が加入しますし、TeamUKYOへの期待感はすごくありますね。
片山 土井君がブエルタで走っていた時代のコンディションに戻れば、名実ともにTeamUKYOのエースとして活躍してくれるだろうし、土井君を(レースで)フリーにするために、今年から移籍してきた畑中(勇介)君が集団の中で若い選手たちをコントロールしてくれると思います。窪木(一茂)はトラックと掛け持ち(コラム「移籍1年目の窪木一茂が見る五輪の夢」参照)になるけれど、ロードに出るときにはスプリンターのエースとして期待しているし、住吉(宏太)や平井(栄一)、山本(隼)、湊(諒)という若手も伸びている。だから、2015年のTeamUKYOは日本人エースを中心に、若い選手たちが一丸となって動いていくことになります。
今中 そしてその先には、日本の既存のやり方ではない爆発的な力で、右京さんが目標を達成してくれる。多くの人がそれに期待しているし、求めています。なるべく一気に行けるように、そのためには周りの人たちの助けも必要ですが、もちろん、僕もできる限りの力を尽くします。なんといっても、それを束ねて進んでいける力が、右京さんにはあるんだから。
著者プロフィール
片山右京 (かたやま・うきょう)
1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。
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