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【自転車】片山右京「日本人選手をエースに据える意味」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira  TOBI●写真 photo by TOBI

今中 さらに今の時代は、周囲に情報があまりにもたくさんあって、事前にいろんなことが分かりすぎてしまうから、チャレンジする前にあきらめちゃうのかもしれないですね。

片山 どんなスポーツでもそうだけど、悔しさとか、負けん気とか、何かをバネにしているほうが強かったりするでしょ? 僕の場合だって、レーシングスクールで英才教育を受けたわけじゃないけれど、F1まで行ったし、今中さんも自分で自転車を抱えてイタリアまで行って、ツール(・ド・フランス)を走るところまで行った。そんなふうに普段から、「あいつは負けん気が強いですよ」っていう部分を持っていなかったら、上には這い上がっていけないんじゃないかな。

 最近の子って、僕たちのころとはキャラクターが違っていて、本当は負けん気が強くて、悔しくて仕方がないのに、それを表面には出さなかったりする。

今中 でも、チーム内のライバル関係ってやっぱり出てくるし、出なきゃいけないとも思うんですよ。仲良しだと、どうしてもそこから這い上がっていく状況には、なかなかになりにくい。

片山 仲が良いうちは、本物じゃないかもね。

今中 そういう選手たちの上に、彼らを束ねていく絶対的な強さを持ったエースが別格として存在し、勝たなきゃいけないプレッシャーの中で戦い続ける経験や実力を見せつけられれば、(若手も)エースのために全力で働こうと思いますよ。そんなチームの中で頂点を目指している実感があって、そこで頑張り続ければ自分も何とかなると思ったら、選手たちもガムシャラになれるんじゃない?

片山 そういう経験をしたことのある選手って、うちのチームでは土井君しかいない。だから、定期的に今中さんが今のような話をTeamUKYOでしてくれると、選手たちにも大きな刺激になると思うんですよ。「クルマの世界ではね......」って僕がいくら言ってみたところで、「それはクルマの世界の話ですよ」って思われたら、それでおしまいだから。

今中 僕にできることがあれば、何でも言ってください。この間もサイクルモード(スポーツ自転車の総合展示会)で手伝ってくれた日大自転車部の選手たちと食事会で話をしていると、熱心にいろいろと聞いてくるんですよ。強くなれると思ったら、彼らは必死なんですよね。大学の方針や自分なりのやり方もあるだろうけど、「取り入れることができることなら、何でもやりたい」という強い意欲を感じました。

片山 どんどん火に薪を焼(く)べていくには、世界を知っている今中さんから彼らにどんどん話をしてあげないとダメなんですよ。そんな話をしてくれる大人って、なかなかいないんだもん。

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