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【自転車】片山右京「スペイン人ライダーが語る『ツール参戦』」 (3ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by Sportiva

 だが、このふたりには共通点もある。自転車に賭ける情熱と、自分の能力に対する強い信頼だ。おそらくそれは、子ども時代から自信を持って自転車レースに取り組み、愉しみながらスキルアップできる豊かで質の高いスペインの競技環境の中で育(はぐく)まれたものなのだろう。

 ホセは、8歳のときに父に連れられてロードレースを観戦し、自転車の魅力に即座に魅了されたという。「ああいうレースなら、僕でも勝てると思うんだよね」と、無邪気で無謀なことを言う息子を、父は鼻で笑ったりたしなめることなく、町のサイクリングチームに加入させた。そして、そこから才能を少しずつ開花させて、やがてプロコンチネンタルチームに到達し、現在のTeamUKYOに至る。

 リカルドの場合、自転車に初めて乗ったのは14歳のときだった。

「子どものころは、友だちやチームのみんなが、『リッチー、おまえ、すげえな』とか、『やるじゃん』とか言ってくれて、どんどん自信を深めていったんだ。それである日、父に相談してみた。『自転車のスクールに通いたいんだけど……』と言うと、快諾してくれて、そのチームで頑張っていたら、やがて監督の目にとまり、『キミにやる気があるなら、もっと上のチームで走らせてあげよう』とチャンスを与えられ、『よし、自分はこの道でやっていこう』と決めたんだ。それから今に至るまで、ずっと自転車に乗っているよ」

 このように、努力を重ねて頂点のプロツアーチームに到達したという自分自身の経験も、おそらく彼の前向きな性格形成に大きく影響しているのだろう。リカルドは、TeamUKYOの「ツール・ド・フランス挑戦」という無謀な目標についても、

「決して不可能ではない、と思うよ」

 と、笑顔で話す。

「もちろん、かなりの時間がかかるだろうし、どれくらいの年月が必要なのかも分からない。かなりの努力を要することは間違いないだろうね。でも、ひたむきに頑張っていれば、いつかはきっと達成できるんじゃないかな。何ごとも、この世に不可能なものなんてない……僕は、そう信じているんだ」

(次回に続く)

著者プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

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