【自転車】片山右京「スペイン人ライダーが語る『ツール参戦』」

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by Sportiva

遥かなるツール・ド・フランス ~片山右京とTeamUKYOの挑戦~
【連載・第26回】

 昨年のJプロツアー個人総合優勝のホセ・ビセンテ・トリビオを擁するTeamUKYOは、今季、リカルド・ガルシアという新たなスペイン人ライダーを獲得した。欧州のトップで走ってきた来日1年目のリカルドは、TeamUKYOの掲げる「ツール・ド・フランス参戦」という目標について、どう思ったのだろうか。

(前回のコラムはこちら)

今シーズンからTeamUKYOの一員となったリカルド・ガルシア今シーズンからTeamUKYOの一員となったリカルド・ガルシア 2014年のTeamUKYOには、もうひとりの強力なスペイン人ライダーがいる。名門プロツアーチーム「エウスカルテル・エウスカディ」の解散に伴い、今季から移籍してきたリカルド・ガルシアだ。

 スペイン・バスク地方に根ざしたチームとして活動を続けてきたエウスカルテルは、長引く不況の影響により、2013年いっぱいで活動を停止した。年内で解散との発表は、シーズン半ばの夏に行なわれたとはいえ、2012年に24歳で自転車界の頂点の一角に加わり、2年目のシーズンを迎えたばかりの若者にとって、その決定は苛酷なものであっただろう。

「今、スペインの自転車界は厳しい時代を迎えていて、生き残っているのは、(プロコンチネンタルチームの)カハ・ルーラルと、(プロツアーチームの)モビスターの2チームだけ。エウスカルテルが解散してしまったのは、本当に残念だね。若いライダーたちの中には、プロとして生きていくことを断念した選手もいるし、自転車選手になるという夢をあきらめなければならない若者たちも少なくないんだ」

 180センチを超す長身に、憂(うれ)いを含んだ雰囲気を少し漂(ただよ)わせたリカルドは、

「......それでも人生は続いていくんだから、大丈夫さ。少なくとも僕は、TeamUKYOに参加することができたのだから、ラッキーだったと思うよ。だから、このチームには本当に感謝をしているし、できる限りの貢献をしたいと思っているんだ」

 そう言って、いつもの陽気で気さくな表情に戻った。

 エウスカルテルが解散し、多くの選手が他国の様々なチームへ移籍してゆく中、リカルドの場合は極東の地に来ることを選んだ。それ以前に日本を訪れたことはなく、今回のチーム加入が初めての来日だった。今年度の体制発表会を行なう前に沖縄合宿でチームに帯同したリカルドは、他の所属選手たちと一緒に練習を重ねながら、少しずつコミュニケーションを深めていった。

1 / 3

プロフィール

  • 片山右京

    片山右京 (かたやま・うきょう)

    1963年5月29日生まれ、神奈川県相模原市出身。1983年にFJ1600シリーズでレースデビューを果たし、1985年には全日本F3にステップアップ。1991年に全日本F3000シリーズチャンピオンとなる。その実績が認められて1992年、ラルースチームから日本人3人目のF1レギュラードライバーとして参戦。1993年にはティレルに移籍し、1994年の開幕戦ブラジルGPで5位に入賞して初ポイントを獲得。F1では1997年まで活動し、その後、ル・マン24時間耐久レースなどに参戦。一方、登山は幼いころから勤しんでおり、F1引退後はライフワークとして活動。キリマンジャロなど世界の名だたる山を登頂している。自転車はロードレースの選手として参加し始め、現在は自身の運営する「TeamUKYO」でチーム監督を務めている。

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る