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【自転車】片山右京「ツール・ド・フランスまでの高い壁」 (2ページ目)

  • 西村章●構成・文 text by Nishimura Akira photo by AFLO

 これらのグランツール以外にも、「クラシック」と総称される長い伝統と人気を誇るワンデーレースが欧州には数多く存在する。いずれも、19世紀末や20世紀初頭から連綿(れんめん)と開催されてきたレースばかりだ。なかには、近代オリンピックより古い歴史を持つものもある。

 いずれのレースでも沿道を多くの観戦者がびっしりと埋め尽くす風景は、この競技が人々に長く愛されてきたことを何よりも雄弁に物語っている。

 つまり、それらの場で勝つことは、己の名前を歴史に刻むことでもあるのだ。

 しかし、これらのレースは世界中の自転車ロードレースチームや選手たちに対して、すべて平等に門戸が開放されているわけではない。

 グランツールやクラシックでは、ひとつのレースにつき200人ほどの選手が走行する。欧州の街路や山道を、レーシングスピードの自転車が大挙して駆け抜けていくさまは、壮観ですらある。だが、この選手たちは、走行する全員が個々にレースにエントリーしているわけではない。優勝や山岳賞(※)などを獲得するのはあくまでも個人選手だが、彼らはいずれも、何らかのチームに所属し、チームとしてレースに参戦している。

※山岳賞=自転車ロードレースにおいて山岳部門を制した選手に贈られる賞。

 これら、自転車ロードレースの競技格式などの基本的な事柄について、やや煩雑かもしれないが、ここで少し確認と整理をしておこう。

 プロ競技としての自転車ロードレースを統括しているのは、「UCI(国際自転車競技連合/Union Cycliste Internationale)」という組織だ。そのUCIの傘下に、各国の自転車団体が所属する。日本でいえば、日本自転車競技連盟がそれに該当する。この構造は、FIFA(国際サッカー連盟)とJFA(日本サッカー協会)の関係になぞらえて考えると分かりやすいだろう。

 このUCIは、グランツールやクラシックなど伝統と格式の高いレースを束ね、「UCIワールドツアー」として年間のシリーズ戦を組織している。ツール・ド・フランスなどのグランツールや、1892年から連綿と続く最も歴史の古いワンデーレース「リエージュ~バストーニュ~リエージュ」などは、すべてこのワールドツアーの1戦として年間カレンダーに組み込まれている。

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