【新車のツボ120】
レクサスLX試乗レポート (3ページ目)
トヨタにかぎらず、日本の自動車メーカーというのは意外に(!?)生真面目だ。「中身がほとんど変わらないクルマを、あまりに高い値段で売るのは、日本のお客様に失礼にあたる(アメリカ人には売るけどね)」と考えても不思議ではない。
「だったら、安く売ればいいじゃん」とツッコミたくなる気持ちもわかるが、クルマの値段というのは、そう単純ではない。クルマを1台売り出すには、国交省その他の認証が必要だし、補修整備のための部品確保も必要だし、日本全国のディーラー向けの教育やマニュアル作成もしなければならない。さらには、同じ会社の商品なら、他のクルマとの兼ね合いで、高すぎても安すぎてもいけない。
というわけで、なかなかLXの国内販売に踏み切れなかったトヨタも、ここにきてついに決断した。そこには地球規模でのレクサス戦略や、海外高級ブランド車への流出防止......などの深い思慮もあるんだろう。ただ、LXは以前から、知る人ぞ知るカリスマ的存在になっており、「日本にもLXをほしがっている人がいるのに、売ってあげないのは失礼にあたる」という生真面目な思いもあったはずだ。
LX570の乗り味は、簡単にいえばランクルそのものだ。5.7リッターは日本車では史上最大級の排気量なので、アクセルを遠慮なく踏むと、巨体を身震いさせながら恐ろしいほどの突進力を見せる。ただ、そういう走りかたはLX本来の使い方ではない。その暴力的なパワーをあえて隠すように運転すると、その車内は静粛そのもので、道路の微妙な勾配や凹凸も存在しないかのように、鼻息だけでスルルーと滑るように走る。
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