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【新車のツボ92】
BMW2シリーズ・アクティブツアラー試乗レポート (2ページ目)

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 見た目も価格も酷似したライバルのメルセデスBクラス(第55回参照)と比較しても、さすが後発だけにスキがない。アクセルのオンオフでグイッと曲がり具合が変化するコントロール性は、薄味にはなっているけどやっぱりBMWのツボだし、広くて見晴らしがよい居住性や使いやすく凝ったトランクなども、史上初のFFのくせに、FFのツボを外していない。3気筒エンジンの音も外から聞いていると、いかにもな"ビィィィィィーン"音であっても、室内にいるかぎりはビックリするほど静かで、ほどほどに迫力と高級感のある"サウンド"になっているのはさすがだ。

 もっとも、BMWは今をさかのぼること20位年以上前の1980年代後半から、真剣にFFの研究をしていた。それでも「そうはいっても俺たちBMWだし」と、ずっとFFを発売するのに躊躇していたのだ。さすがは徹底したイメージ管理。そこで、BMWは90年代後半に英国ローバー社(当時)を買収。そのときにBMWが獲得したのが、FFの代名詞ともいえる"ミニ"というブランドである。今のミニは生産工場こそ昔と同じ英オックスフォードでも、企画や設計開発は実質的にBMWが手がける。

 だから、今回の2シリーズ・アクティブツアラーは、たしかにBMWブランドとしては史上初の市販FFだけど、彼ら自身はFFの経験を、十二分に積んできているわけだ。ツボを外さないのは当然といえば当然だ。

 かつて、BMWがSUVを作った(第78回参照)ときも驚かされたが、今度はついにFFである。しかも、小型ハイトワゴンである。納得しがたいマニアもいるだろうが、ほどほどに手頃な価格で、まずまずの実用性があって、"どことなくいい人"を気取ることができるBMW......なんて、こりゃもう、売れそう感プンプン。これはいわば、高級ブランドのカジュアルライン的な商品だからである。いかにも今っぽい。ただひとつの懸念は、ワタシのクルマ売れ行き予想の的中率がメチャクチャ低いこと......だけど。

 "一芸入魂"を尊ぶワタシのようなオッサンマニアは「BMWだけは信じてたのにぃ!」と歯ぎしりしたくなるのは否定しない。でも、あのミニを見事に成功させて、こうしてどんなクルマでもBMWにしてしまう彼らのマーケティングのツボは見事というほかない。

【スペック】
BMW 218iアクティブツアラー・ラグジュアリー
全長×全幅×全高:4350×1800×1550mm
ホイールベース:2670mm
車両重量:1490kg
エンジン:直列3気筒DOHCターボ・1498cc
最高出力:136ps/4400rpm
最大トルク:220Nm/1250-4300rpm
変速機:6AT
JC08モード燃費:16.8km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:381万円

著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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