2014.11.28

【新車のツボ91】
アウディS1試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 アウディS1は、以前ここでも紹介したA1(第6回参照)の高性能スポーツモデル......だが、そんなヌルい表現ではまったく物足りないくらいの"ウルトラ高性能スーパースポーツ"である。

 ベースとなったA1は日本でいうコンパクトカーサイズ(欧州ではBセグメントなどと呼ばれる)だが、コンパクトカーのハイエンドスポーツモデルといえば、たとえばルーテシア・ルノースポール(第66回参照)の200馬力/240Nm前後くらいまでが基本ライン。排気量はちょい昔なら2.0リッター自然吸気、最近では1.4~1.6リッターのターボが通り相場である。

 ところが、このS1の心臓部はなんと2.0リッターターボで、231馬力/370Nm! つまりは、同じVWグループのゴルフGTI(第73回参照)と同じエンジンだ。ゴルフGTIといえば、アンタ、ひとつ上のCセグメントのハイエンドスポーツの1台だ。「なんかの間違いでないのか? そもそも、ちゃんと走れんのかっ!?」と、クルマに詳しい人間ほど驚愕するスペック。失礼ないいかたをすれば、バカ企画(ホントに失礼!)に近い。

 そんな恐怖のS1は、しかし、乗ってみると、なんともまあ、見事なお手前である。S1はスペックを見て恐怖におののくドライバーが、拍子ぬけしてしまうほどシレッと速いのだ!

 ちょっと補足しておくと、S1はA1のボディにケタちがいをネジこんだだけの単純なクルマではない。A1の前輪駆動のままだとさすがにコントロール不能の玉砕グルマになる危険性が高いので、A1にはなかった4WDが、このクルマだけに仕込んである。その4WDも黒子に徹していて、これ見よがしに曲がらせる演出はないが、コーナーでガンガン踏みこんでも限界を超えそうなヤバさがほぼ皆無。知らないうちに、自分の走行ペースに気づいてビックリ......というタイプ。エンジン音もいかにも高性能らしい迫力でも、このエンジンを載せるクルマとしてはS1は最も小さく軽いからか、音質にも加速感にも、不思議とさわやかな清涼感までが醸し出されている。

 やっぱり4WDは偉大なツボである。エンジン性能はたしかに、パワーもトルクも相場観の5割増し以上......というすさまじいレベルでも、4WDならそれを受け止める駆動輪も2本から4本に倍増している。考えようによっては、200ps級のFFよりも余裕があるという計算も成り立つ。