【新車のツボ93】
日産スカイライン200GT-t試乗レポート
最新型スカイラインは、以前ここで紹介したヤツ(第15回参照)の次の世代にあたる。今回でなんと13代目! 初代スカイラインの発売は60年近くも前の1957年で、日本車ではトヨタ・クラウンに次いで長い歴史を持つ。継続は力なり。クルマにかぎらず長い歴史を持つ商品ということは、ずーっと一定以上の支持を受けてきたことを意味するわけで、それだけでツボではある。
さて、この13代目スカイラインの日本発売は今年の2月。まずは"350GTハイブリッド"のみでのスタートだった。それは「最速ハイブリッド」を自認する高性能に加えて、世界初の「ステアbyワイヤ」と、最新ハイテクがテンコ盛り。ただ、このときに取り上げなかったのは、人間とクルマがつながる動力&操作系にハイテク効きすぎで、ワタシのようなオタクには「俺が操っている!」と実感できるツボが薄かったからだ。
しかし、その後に追加された200GT-tは2.0リッターターボ。ハイブリッドではない。それまで全車標準だったステアbyワイヤ(室内のステアリングと前輪が切り離されて、完全電子制御で舵を切る)もオプション設定となった。今回の取材車もステアbyワイヤは非装着で、いわば最新の「素カイライン」である。
ちなみに、この200GT-tのエンジンはオートマとセットで独ダイムラーから供給される。こういう業務提携は今やめずらしいものではないが、スカイラインみたいな看板商品の心臓を他社から......とは、日本企業の伝統的価値観では本来ありえない。ただ、とてつもなく複雑・高度化したクルマの要素技術をすべて自社でまかなうのはメチャ大変。10数年前にゴーン体制になってからの日産は、よくも悪くも、こういうクールな経営法が目立つ。
というわけで、最新の素カイラインは、事前の期待どおりのツボな日産だった。最初のハイブリッドモデルでは気づかなかったが、こうしてハイテク抜きで味わうと、ボディはカッキーンと硬質。足まわりはいかにも精度高くて滑らか。「歴史的名車」とワタシが勝手に認定している先代スカイラインからバカマジメに正統進化している。基本的にはスパッと水平姿勢で曲がる現代風キャラだが、ブレーキを踏めばジワッとフロントが沈んで、微妙な操作にも精緻に反応して、手やお尻に繊細な接地感が伝わって......と、アナログな職人技がそこはかとなく薫るのがステキ。
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著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/