【新車のツボ93】
日産スカイライン200GT-t試乗レポート (2ページ目)
ダイムラーエンジンは同じドイツのBMWのそれより低音ザラザラ系で、美声ではないが迫力はある。オートマも滑らかさより変速のキレ優先なのが、スカイラインの走りにマッチしていて、乗るほどに「細かいところまで好き者エンジニアの配慮が行き届いているなあ」と感じさせるのがツボである。
この200GT-tは前記のとおり、現行モデルとしてはハイテク少なめの素カイラインだが、最近話題のレーダーを駆使した事前察知安全性だけは主要グレードに標準となる。
この種の安全技術では、海外ではボルボやメルセデス、日本ではスバルのアイサイトあたりが有名だが、じつは日産のそれもお世辞ぬきで世界トップ級。スカイラインでは前後左右のほぼ360度にレーダー網を張りめぐらせて、前方についてはアクセルとブレーキも自動制御する。
たとえば前のクルマに近づきすぎた場合、他社システムの多くは「まずヒステリックに警告→最終手段で自動ブレーキ!」という感じだが、スカイラインは危機的状況でないかぎり、とくに警告もせず、クルマが勝手にアクセルペダルを押し戻して(これもリアクティブペダルというハイテク)、スーッと自動ブレーキをかける。そのブレーキの所作があまりに自然で穏やかなので、市街地を前走車についてトロトロ走っているだけだと、人間はブレーキを踏むのを忘れてしまうくらい。
この種の自動安全技術は危険を回避しつつも「人間をいかに油断・依存させないか」がむずかしい。この日産スタイルには賛否両論あろうが、少なくとも技術はすごいし、「今後のクルマの安全はこうあるべし」みたいな技術陣の信念が伝わってくることは事実。
最近の日産の国内戦略は一部の特殊なスポーツモデルを除けば、「日本人って、もうクルマが好きじゃないんでしょ?」というクールで冷めた印象は否めない。でも、こうしてスカイラインに乗ると、なんだかんだいっても日産の基礎研究レベルはいまだに高く、技術にアツい職人が残っているんだなあ......と、オタクのツボはしみじみと刺激されるのだ。
【スペック】
日産スカイライン200GT-t タイプSP
全長×全幅×全高:4800×1820×1450mm
ホイールベース:2850mm
車両重量:1680kg
エンジン:直列4気筒DOHCターボ・1991cc
最高出力:211ps/5500rpm
最大トルク:350Nm/1250-3500rpm
変速機:7AT
JC08モード燃費:13.0km/L
乗車定員:5名
車両本体価格:456万8400円
著者プロフィール
佐野弘宗 (さの・ひろむね)
1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/
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