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【新車のツボ55】
メルセデスベンツBクラス 試乗レポート

  • 佐野弘宗+Sano Hiromune+●取材・文・写真 text&photo by

 コロンと背の高いメルセデスベンツのBクラス。シートは2列、乗車定員は5人......だから、ミニバンではなく、いわゆるハイトワゴンというべき存在。ハイトワゴンといえば軽自動車やコンパクトカーに多いタイプ。ベンツのみならずBMW、アウディ、そしてレクサスといった高級ブランドは、いかにも高級車らしいセダンやSUVが主力だから、この種の存在自体がけっこうめずらしい。

 現在のBクラスは昨年春に発売された2世代目で、先代同様に弟分のAクラスと土台を共用する。先代Bクラスは"ベンツ初の小型FF車"だった初代Aクラスの流れをくむ設計で、やけに床が高いボディ構造が特徴だった。それゆえ、先代Bクラスの床下にはポッカリと空間が空いていて、ハッキリいうと室内空間はあまり広くなかった。その床下空間は当時「将来的に電気自動車や燃料電池車に転用するため(のバッテリーなどの置き場所)」と説明されたりして「さすがベンツは、コンパクトカーもフツーじゃない」と一部のベンツ信奉者から賞賛された。

 しかし、いまのBクラスはその独特の高床構造をスッパリとやめた。先代はエンジンルームやサスペンションの設計も類例のない独特のものだったが、いまは各部の設計も、たとえばフォード・フォーカスやVWゴルフなどとソックリ。つまり、技術的には「基本構造の技術は他社がつくりあげた定番形をそのまんまイタダキ!」といった風情。「とにかく人マネはしない。クルマの基本形は自分たちがつくる!」が絶対社是だったかつてのベンツを知る人には、いまのBクラスは「ハイトワゴンという時点で高級車っぽくないし、中もベンツとしてはやけにフツーになっちゃった」と思えなくもない。

 ただ、自分で書いておいてなんだが、そういう"アゲ足取り"みたいなツッコミをひとまず横に置くと、いまのBクラスは異様によくできたコンパクト・ハイトワゴンである。

 ベンツはこのBクラスを開発するときに、シャシーからボディ、エンジンに変速機にいたるまですべてをゼロから新開発した。そこに世間をあっと驚かせる新技術やアイデアは、ハッキリいって皆無に近いが、そのぶんの労力を徹底的に"いいクルマ"にするというツボに集中投下した感じ。いやホント、1台のクルマとしては文句なしの完成度である。

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著者プロフィール

  • 佐野弘宗

    佐野弘宗 (さの・ひろむね)

    1968年生まれ。新潟県出身。自動車評論家。上智大学を卒業後、㈱ネコ・パブリッシングに入社。『Car MAGAZINE』編集部を経て、フリーに。現在、『Car MAGAZINE』『モーターファン別冊』『ENGINE』『週刊プレイボーイ』『web CG』など、専門誌・一般紙・WEBを問わず幅広く活躍中。http://monkey-pro.com/

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