狙うは金メダル。パラバドミントン里見紗李奈は車イスで「走る」 (3ページ目)

 里見選手は、ネイルなどファッションにもこだわりが感じられる可愛らしい印象の今どきの21歳の女性。そして負けず嫌い。そのことは、里見選手本人も認めています。収録では、藤井さんに車いすに乗ってもらい、里見選手と対決することになったのですが、その時も、「勝ちたい」という気迫が里見選手の全身にみなぎっていました。

 最初は趣味程度で考えていたパラバドミントンですが、競技を始めてから3カ月後、里見選手は国内大会に出場してぼろぼろに負けました。そして「そこで負けず嫌いに火がついちゃった」と、本格的に取り組むようになっていったのです。

 初めてパラバドミントンの体験をしてから、2回目の練習でうまく返せないことに苛立って泣いていた里見選手は、一度体育館の外に出ていってしまったそうです。それでも、「もう1回お願いします!」と練習に戻ってきました。初回から指導を担当されていた男子パラバドミントン日本代表でもある村山浩選手がその時のことを覚えていて、当時から「彼女はしっかり練習したらパラリンピックに出るような選手になれる」と感じていたといいます。

 中学生の頃にバドミントンを経験していた基礎がある里見選手は、そこから急激な成長を見せます。車いすバドミントンと真剣に向きあうことで、次第にアスリートとしての自覚も芽生えていきました。

 今回の取材で、とくに印象に残った里見選手の言葉があります。それは、「どういう練習をするのか」という質問への答えでした。「走っています」──。つまり、車いすで走る。持久力を上げるために走る。私は、車いすは「漕ぐ」と思いこんでいましたが、里見選手にとっては「走る」。そうした選手の皆さんの言葉づかいも含めて、しっかり勉強して、パラリンピック競技の取材をしなくてはいけないと痛感しました。

 里見選手の目標は、東京パラリンピックの金メダル。シングルスだけではなく、「ダブルスでも金メダルを取りたい」と意欲的です。とくにシングルスは各選手の力が拮抗していて、誰が勝つのか予想が難しい状況。里見選手が優勝した世界選手権にも出場していた、元世界ランク1位のタイのスジラット・ポッカム選手を筆頭に、中国勢も強敵ぞろいです。

 世界選手権で優勝したことについて里見選手は、「勝っちゃった」と表現していたように、勝つ実力が自分にはまだないと思っていたにもかかわらず、予想外に優勝をしてしまった。もちろんうれしかったものの、「まだ力が足りてないのにいいのかな」と率直に思ったといいます。

 大会後、「優勝した里見」と注目されることがプレッシャーだったそうですが、その後、公式戦で負けて「ホッとした」と里見選手。ただ、王者としてのプレッシャーのなかでプレーする経験ができたことは、必ず糧になっているはずです。競技歴2年半ですから、まだまだ伸びしろも十分。東京パラリンピックに向けて、さらに注目したいと思います!

 12月14日(土)11:00~のBS-TBS『アスリート夢共演』でぜひ、里見選手と藤井さんの対談や対決をぜひチェックしてください。

photo by Yamamoto Raitaphoto by Yamamoto Raita■プロフィール 上村彩子(かみむら・さえこ)1992年10月4日 千葉県生まれ 【担当番組】TV-『S☆1』土/24:30〜 日/24:00〜 『SUPER SOCCER』日/25:20〜 『フラッシュニュース』金21:00頃~(変動あり)※隔週 『Oh!ベイスターズ2019』 金/26:55〜 RADIO-『千葉ドリーム!もぎたてラジオ』...日 /12:30〜

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