ヴィニシウスの相手を抜き去るテクニックを大解剖。日本の名ドリブラーが徹底解説 (2ページ目)
ドリブルだけでなく、ゴールも決められる
最初の「軸当てパス」はまさに遊び心あるブラジル人らしいプレーのひとつです。ただ、それだけではなく、ボールタッチが大きくなってしまったのを逆手に取って、相手が食いついてきたところで逆を取れる実用的なテクニックでもあります。
足裏を使うのでコントロールもしやすく、試合のなかでも成功させる確率の高い足ワザだと思います。
2つ目の「スルートラップ」は相手の動きを見ながら、あるいは背後に感じながらプレー選択ができる、ヴィニシウスならではの足ワザだと思います。
まずは相手との距離感、背後のスペースが見えているのが重要です。そのうえで、相手はヴィニシウスのテクニックが怖いので球際に激しく寄せてきます。そこでボールを触らずにスルーすることで相手は逆を取られ、完全に置き去りにされてしまいます。
足元に止めると見せてスルーして背後を取る「スルートラップ」。相手の動きをよく見極めるのが大切この記事に関連する写真を見る 最後の「アウトチップシュート」は、ヴィニシウスにしてはタッチが大きいなと思いましたが、抜群のスピードによってそれさえも相手を食いつかせるためのフェイントとして成立していました。
通常であれば、あれだけタッチが大きければGKのボールになるものです。ゴール前はスペースもないし、相手もかなり寄せてくる意識が高いエリアです。
ちょっとタッチが大きくなれば、チャンスを潰してしまうことになりますが、ヴィニシウスは追いつけるだけの自信や感覚があったからあのタッチになったのだと思います。なかなかマネできないですね。
そのあとのチップキックも角度がなく、GKにも詰められているのでかなり難しいシュートだったと思いますが、正確にGKの上を通して決めてしまう技術はさすがです。今季これだけゴールを決めているのも納得です。
ヴィニシウスはドリブルだけではなく、フィニッシュまで自分ひとりで行けてしまうし、それで上までのし上がっていこうという気概がある選手で、個人的にもすごく好感を持てます。
世界のトップで活躍するためには、うまいだけではなく、点も取れるというのはとても重要なことだと思います。その意味でヴィニシウスのようにゼロからゴールを生み出し、自分で完結できてしまうのは特別な選手だと感じますし、彼がレアル・マドリードでプレーできる理由だと思います。
楠神順平
くすかみ・じゅんぺい/1987年8月27日生まれ、滋賀県愛知郡出身。2005年度、野洲高校3年時に、第84回全国高校サッカー選手権大会で滋賀県勢初の全国優勝を果たす。同志社大学を経て2010年に川崎フロンターレに入団。スキルフルなボールテクニックで注目を集める。2013年にセレッソ大阪。2016年にはサガン鳥栖でプレー。2016年7月にオーストラリアのウェスタン・シドニー・ワンダラーズへ。2018年にはJリーグへ戻り清水エスパルス、モンテディオ山形でプレーした。Jリーグ通算155試合出場、13得点。2020年から舞台を南葛SC(関東リーグ)に移し、Jリーグ入りを目指すチームでプレーしている。
◆【図】レアル・マドリードほか、2021-22シーズン中間地点 欧州トップ10クラブフォーメーション
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