日本一になった元京大アメフト部・水野監督の言葉「吉田山に登れ」は、「起業」の後押しにもなる (2ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【「ひとつのことで一流になれ」】

奥野「僕、実は京大のアメフトチーム、ギャングスターズの監督を長年、務められた水野彌一さんに、会ったことがあるんだよ。

 ま、『会った』と言っても、直接会話を交わしたというのではなくて、たまたま僕が高校1年生だった時、生徒に講演をするために学校にいらっしゃったんだ。その時、いろいろな話をされたんだけど、『吉田山に登れ』というストーリーを強烈に覚えていてね。

 どういう話なのかは後で話すけど、高校1年生の僕は、ちょっとした壁にぶつかっていたんだ。文武両道なんて言われる高校に入ったものの、それは別に勉強もスポーツも両方抜群にできるスーパー高校生というわけではなくて、見事に分業されていたんだよ。つまり、勉強ができる子はひたすら勉強、スポーツができる子はひたすらスポーツっていうようにね。

 で、僕は勉強のほうの特進クラスなんてところに入らされたものだから、毎日授業が7限目まであるんだ。終わる時間が夕方の4時半くらいだから当然、部活動なんてできるはずがない。文字どおり勉強漬けの高校生活だったんだ。

 髪型なんて全員丸坊主しか認められなくて、規定より数ミリ伸びたら『どうしてこんなに髪の毛を伸ばしているんだ』って怒られる。勉強は厳しい。部活はできない。もちろんゲームなんかして遊ぶ時間も全然ない。それでちょっと腐っていたんだ。

 そんな時、水野彌一さんの講演を聞く機会に恵まれたんだよ。

『君たちはゲームをしたいと思っているだろう。遊びたいと思っているだろう。個性が大事だって思っているだろう。でも、それは大人からそう思わされているだけなんだ。ゲームがしたいと思わされているだけなんだ。本当に自分のやりたいことは何なんだ?』と言われた。それを聞いて、『ああ、そうだな』って思った。『こんなところで腐っているような個性だとしたら、それは個性でも何でもないな』ってことに気づかされたんだよ。

 続いておっしゃったのは、『青春なんて暗いものなんだ』、『スポーツで汗かいて気持ちいいとか、楽しいとか言うけれども、そんなのはスポーツではない』。

 水野さんが何を言いたかったのかと言うと、『ひとつのことで一流になれ』ということなんだ。『スポーツをするなら、とにかく勝つためにすべてのことを犠牲にして取り組み、研ぎ澄ましていかないと、結局は何もできない』ってことなんだね」

鈴木「うーん、僕のような心がけでは甲子園に行けないし、起業もできないかも」
由紀「でも、何もしなかったら何にもならないんだから、何か始めてみたら?」

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