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日本一になった元京大アメフト部・水野監督の言葉「吉田山に登れ」は、「起業」の後押しにもなる (4ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【小さな山にまず登ってみる】

奥野「ははは。現実的にはそうだよね。まあ、1年生の時は難しい入試を突破した喜びでフワフワしているから、就職はどうなるんだなんて考えてもいないだろうけど、まあ心配だよね。それに、やっとの思いで大学生になれたのに、また練習、練習なんて、嫌だと思うだろうね。

 そういう時の殺し文句は、『うちに来れば日本一になれる』だったそうだよ。確かに、スポーツで日本一になった経験のある学生って、京都大学にはほとんどいないんだ。だから、それで口説ける学生はいた(笑)。

 でも、それでも口説けない学生もいたわけだけれども、その時、水野さんは『吉田山に登れ』と言ったらしい。

 吉田山というのは、京都大学の裏にある標高102メートルの小さな丘のようなものなんだけど、とにかく、まず登ってみろ、と。

 京都大学に入ってくる学生は皆、秀才です。頭がいいから、何でも見えてしまうような気になってしまう嫌いがある。こうすればこうなる、ああすればああなるってね。

 でも、それは見えた気になっているだけで、本当にやれば違う景色が見えるはずで、そうなるとまた別のことを考えるようになる。だから、何でもいいからとにかくやってみろということなんだね。

 エベレストに登ろうとしたら、それこそ重装備が必要だし、大勢の人のサポートもいる。お金だってたくさんかかる。でも、吉田山なら散歩のついでに登ることができる。一度、登ってみたら、登山の何がいいのか、わかるかもしれない。とにかく第一歩を踏み出して、そこからどうするべきかを考えればいいじゃないかというのが、水野さんの考え方だったんだね」

由紀「あ、それって起業にも通じるものがありませんか?」

奥野「そうなんだよ。今は昔に比べて、起業をするにしても、失敗のコストがすごく下がっているんだ。

 昔だったら、産業自体が重厚長大な製造業中心だったから、工場が必要だし、工場に入れる機械も必要だし、広い土地だって要る。設備に物すごくお金がかかったし、そこで働く人も大勢雇わなければならなかった。

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