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投資教育が始まった高校で野球部の生徒が「デフレ」を考える。旅行支援が歪めるモノやサービスの値段 (3ページ目)

  • 鈴木雅光●構成 text by Suzuki Masamitsu
  • はまのゆか●絵 illustration by Hamano Yuka

【付加価値を求めないから安さでしか競争できない】

奥野「お金を払う側が、『これだけの額を払うんだから、それに見合うクオリティを出せ』と言い、財やサービスを提供する側がそれを受けて、お客さんが満足できるクオリティを出せば、お客さんは『ありがとう』と言って、気持ちよくお金を払ってくれる。

 ところが、こういう緊張関係がなくなると、モノやサービスを提供する側は、ちゃんとしたものを作ろうという気概がなくなってしまうし、お金を払ってそれを買う側も付加価値を求めなくなるから、『別に安ければいいんじゃない』ってなる。

 これ、まさにデフレの原因といってもいいよね。付加価値を求めないから、価格の安さでしか競争できないので、モノやサービスの値段がどんどん下がっていく。そんな現場で働く人たちは、付加価値を生み出すのとは全く無縁な単純作業を、安い賃金でやらされる。

 お客さんと、モノやサービスを提供する人がちゃんと向き合う関係性を築くことができれば、高い付加価値のモノやサービスを生み出すために、付加価値の高い人たちが必要になるし、高付加価値の人たちには高い賃金を払う必要があるから、経済活動がどんどん活性化されていく。

 ね、国からの補助が、いかに人々を甘えさせるか、わかるでしょう。そもそも人間は弱い生き物だから、それは易きに流されますよ。国が『お金をあげるから』と言えば、多くの人が努力をしなくなる。そのうち、痛みが伴うことは全部否定するようになる。日本という国の運営そのものがまさにそうなっている。政治家も、国民に痛みが伴う政策を言った瞬間に落選するから、耳に心地の良いことしか言わなくなる。

 でも、そんなに日本人ってバカなのかな?」

由紀「まあ、鈴木君は成績が悪いから、そうかもしれないと思いますけど(笑)」
鈴木「こらこら。それは言いすぎでしょ。そういえば最近の防衛費を増額するとかいうニュースでも、『必要だと思うけれども、増税は嫌だ』という声がありますね」

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