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日本競泳界の新たなスター候補、17歳今福和志はどうやって育ってきたのか――その強さの秘密 (3ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

「ずっと力を入れていると、(泳ぐ時間が)1時間とか2時間とかになるともたないので、手をだらんとしたままで、とにかく水を当てているだけで泳いだり、リカバリーも力を入れずに、ただ回すだけ、みたいな感じでやったりして。それを、プールでもやっていました」

 最初は50m~100mぐらいから始めたその泳ぎも、今では「気づいたら10㎞までになっています」と今福。そうやって、ゆっくりした動きであってもタイムの速い泳ぎができるようになったことが、競泳でも生かされるようになった。

 また、今福は10㎞を泳ぐことで1500mが短く感じることも「オープンウォーターをやっている利点」と言って、こう続ける。

「この前、オーストラリアに行った時は全身をクラゲに刺されて眠れなかったけど、プールでは安心して泳げますしね(笑)。それに、(プールでは)50mごとにターンで区切りがあるので、レースプランもたくさん考えられますから。

 そういったことから、競泳だけをずっとやっていたら、たぶんこんなにタイムは出てないな、というのはあります。競泳だけだと、1500mだけ(に専念)みたいになっていたと思うけど、(オープンウォーターも)並行してできていると、心に余裕ができていいのかな、と。

 とにかく、今回結果が出たので、自分の目標にしているところには着実に近づいている感じはします。日本の長距離界は世界に少し遅れているところがあると思うので、世界レベルに少しでも近づいて、しがみついて......。いずれは、あわよくばメダルを獲れたらな、という意気込みでいます」

 今福と同じ枚方SS所属で、同じくオープンウォーターにも取り組んでいる梶本一花(同志社大)は、昨年2月の世界選手権ドーハ大会で競泳とオープンウォーターに出場。今回の日本選手権でも、女子自由形400m、800m、1500mで優勝し、世界水泳の代表となった。

 今福の今後の目標は、その梶本ともに2028年のロザンゼルス五輪で競泳とオープンウォーターの2種目に出場することになるだろう。

 そんな今福に対して、現在指導にあたっている太田伸コーチも大きな期待を寄せる。

「今福は本当に人なつっこい性格で、海外の大会に行っても毎回友だちを作って帰ってくる。将来的には強い選手と一緒に練習できる海外も拠点とし、世界で戦える選手になってもらいたい」

 大舞台において、日本の競泳界がこれまで踏み込んでいけなかった自由形長距離。今福がその、世界への道を切り開いていく先駆者となるに違いない。

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