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日本競泳界の新たなスター候補、17歳今福和志はどうやって育ってきたのか――その強さの秘密 (2ページ目)

  • 折山淑美●取材・文 text by Oriyama Toshimi

 高校2年生ながら、すでに世界を見据え、そこでの戦いを現実的に捉えている今福。日本競泳界に登場した、待望のスター候補と言っていい。

 しかもこの今福、実は昨年の世界ジュニア7.5kmで7位になるなど、オープンウォータースイミング(海や川、湖といった自然の水のなかで行なわれる長距離水泳競技)にも積極的に取り組んでいる。大学生選手をマークしてラスト50mで抜け出した400mでの優勝もその成果のひとつであり、自らの泳ぎの大きな糧にもなっている。

「400mは『絶対にやってやろう』という感じではなく、ベストが出たらいいか、というくらいでした。でも、思った以上に調子がよくてタイムも出た。オープンウォーターの試合のあとは、必ず400mは速くなるんです。海では駆け引きが主で、相手の様子を見ながらどこで勝負するか、という考えがものすごく育つというか。そうしたことも含めて、長距離では絶対に海の要素は必要だなというのを、あらためてこのレースで感じました」

 こうして今回の日本選手権で一躍脚光を浴びた今福だが、幼い頃はそこまで水泳に熱心だったわけではない。両親がスイミングスクールのコーチをしていたこともあって、0歳から水泳を始めて小学1年生で選手コースに入ったが、「小学生の時はあまり水泳が好きじゃなくて、練習に行くのも嫌だった」という。

「中学生の時は警察官になりたくて、剣道か柔道をやろうかな、と思っていました」

 だが、水泳をやめることは当時のコーチに止められた。そうして中学2年生の冬、「チーム全員で泳ごうとなって、初めて1500mを泳いだらタイムがよかった」と今福。以来、長距離に興味を抱いて、真剣に取り組むようになっていく。

 その時のコーチからその後、オープンウォーターも勧められた。

「(コーチが)わざわざ家まで話に来たんですが、(オープンウォーターは)絶対にやりたくなかった。波も嫌だし、寒そうだし、(海には)クラゲもいるし......。それで、『海は怖いから、絶対に泳ぎたくない』と言って泣きました(笑)」

 それでも、コーチから「頼むから」と必死に説得されて泣く泣く始めた。すると、始めて2カ月で出場した選考会で世界ジュニアの出場が決定。それから「オープンウォーターも楽しいなと思うようになって、ずっと続けられるようになりました」と、今福は笑う。

 その時に出場した世界ジュニアでは5㎞で13位。以降、世界ジュニアや国内大会の他、全豪選手権などにも出場し、5㎞、10㎞で上位に入る成績を残している。その過程において、泳ぎのコツもつかんだ。

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