世界水泳の競泳は「初」と「復活」も期待。最強メンバーが揃う種目もある (3ページ目)

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi
  • photo by Kyodo News

 25日。大会5日目。男子200m個人メドレーでは瀬戸大也に、連日のメダル獲得が期待される。世界選手権でこの種目のメダル獲得はない瀬戸だが、4月の日本選手権では自己ベストを更新しており、1分56秒前半まで行けばメダルの可能性は十分だ。アメリカのチェイス・カリシュ、オーストラリアのミッチェル・ラーキン、中国のオウジュンあたりがライバルとなる。

 男子100m自由形決勝では、この種目日本人選手初の決勝進出の期待がかかる。

 4月の日本選手権で、50m自由形で自己記録を更新した塩浦慎理。100mの日本記録を持つ中村克の両方に可能性がある。予選から激戦のこの種目は、高い強度のレースを繰り返せるタフさがポイントとなる。

 女子200mバタフライでは、長谷川涼香に注目。リオ五輪では準決勝敗退、前回の世界選手権では決勝進出と少しずつ力をつけて来ている。決勝で自己ベストの2分06秒00あたりで泳げればメダルのチャンスはある。

26日。大会6日目。この日最大の注目は、渡辺一平の200m平泳ぎだ。世界記録保持者の彼は、今世界で一番速い記録を持っている選手だが、最大のライバルであるロシアのアントン・チュプコフには直接対決では連敗中だ。チュプコフは後半のスピードに絶対的な自信を持っており、「どんなレースパターンになっても最後に逆転できる」と思っている。その自信がある限りチュプコフには余裕を持って泳がれてしまう。渡辺からしたら「前半からリードを奪っていかないと勝ち目はない」というプレッシャーになるからだ。

 この現状を打破する為、渡辺も今シーズン様々なレースパターンを試して来た。本番の決勝レースでどんなレースパターンで挑むかは、本人、そして指導する奥野景介コーチのみぞ知るところだが、予選、準決勝と見ていく中で、勝つとしたらこのレースパターンだ、というのが見えてくることだろう。渡辺本人は「準決勝で相手にプレッシャーをかけるレースをしたい。タイム的には2分5秒台を目指したい」と言っている。実力者揃いのこのレースで渡辺が勝ちきれるのか注目だ。

 松元克央、江原騎士、吉田啓祐、髙橋航太郎のメンバーで挑む男子4×200mフリーリレーにも期待したい。

 27日。大会7日目は、決勝のレースに何人進められるかに注目したい。男子50m自由形の塩浦慎理、中村克。男子100mバタフライで初代表の水沼尚輝。さらに女子200m背泳ぎの酒井夏海、白井璃緒。これらの種目で決勝進出ができれば、日本チームに勢いをつける事になるだろう。100mバタフライの水沼尚輝は、最終日の男子4×100mメドレーリレーでも重要な人物だ。

 28日。大会最終日。何と言っても男子400m個人メドレーの瀬戸大也に注目だ。今回の日本代表でもっとも金メダルに近い種目だと思う。最大のライバルで前回大会覇者のチェイス・カリシュが今シーズンまだ良いタイムで泳いでないが、今大会で一気に状態を上げてくる可能性はある。

 しかしながら、瀬戸のモチベーションの高さには感服する。彼はすでに世界選手権で2度頂点に立っているが、ここ数年これまで以上に「できることは全てやる」という気概を持って取り組んで来ている。そこにはリオ五輪で金メダルに届かなかった悔しさと、東京五輪にかける思いが詰まっている。本人も「自分の泳ぎができれば勝てると思う」と語るほど充実の時間を過ごして来ている。

 今大会で金メダルを獲得すれば、来年の東京五輪出場が内定する。これは簡単な事ではないが、その最有力候補は瀬戸だろう。

 女子400m個人メドレーの大橋悠依にも注目だ。日本選手権では思い通りの泳ぎができずに涙を流す場面もあったが、5週間に及ぶ長期の高地トレーニングでどこまで仕上げて来たかがポイントとなる。この種目の女王カティンカ・ホッスーにどこまで迫れるか期待したい。

 入江陵介、小関也朱篤、水沼尚輝、中村克が出場する男子の4×100mメドレーリレー決勝もメダルの可能性はある。メンバーたちの間では日本記録を更新し、「3分29秒台で銀メダル」が目標と話しているという。2013年以降メダルが取れていない種目だけに「日本復活」に期待したい。

 いよいよ明日開幕する世界選手権。ここに日本選手を中心に見所を記しただけでもワクワクするレースがたくさんあるが、この他にも世界トップスイマー同士の熾烈な戦いが待っている。私も連日会場に足を運び、その状況をレポートして行きたいと思う。

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