松田丈志が解説。大橋悠依が
自己記録を2秒も縮めたストロークの反復

  • 松田丈志●文 text by Matsuda Takeshi 新華社/アフロ●写真

世界水泳短期集中連載・「キャプテン」松田丈志の目線(3)

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 競泳日本チームに待望のメダル第1号が大きなサプライズとともにもたらされた。

 世界水泳競泳2日目、この日最後の種目となった女子200m個人メドレー決勝。大橋悠依が4月に出した自己ベストをさらに2秒以上更新する2分07秒91で銀メダルを獲得した。準決勝はギリギリ8番での通過。そのレース後のコメントで、本人はまだ余力はあると話してはいたが正直、一番端っこのコースからの銀メダル獲得は想像できなかった。

世界水泳で銀メダル獲得の大橋悠依は満面の笑顔世界水泳で銀メダル獲得の大橋悠依は満面の笑顔

 会場は地元の英雄、カティンカ・ホッスー(ハンガリー)の今大会初の金メダルを期待するファンで超満員となり、レースは大歓声のなか、行なわれた。決勝前は緊張していたという大橋だが、自分が端っこのコースで、しかも会場の大声援はセンターコースを泳ぐ地元の英雄に送られているということで、かえって冷静になれて「自分の泳ぎに集中できた」という。

 レースは予想通りホッスーが先行する展開。しかし、大橋も8コースからバタフライ、背泳ぎ、平泳ぎとこなし、自身の自己ベストを上回るラップを刻んでいく。3種目を終えた150mの時点で自身の準決勝のタイムを1秒24秒も上回っていた。そして、圧巻はラストの自由形だ。準決勝のラップタイムから1秒30秒も縮めるタイムでフィニッシュ。このラスト50mのラップタイムは優勝したホッスーのラップをも上回る記録だ。

 このレベルの選手が200mのレースでいきなり2秒も自己ベストを更新するのは驚きだった。本人は準決勝のレースでも最後の自由形以外は、そこそこ力を出していたと言っていた。そこから2秒も上げてきた。これは日本選手権の時も感じたことだが、大橋はいざアクセルを踏んだ時の上げ幅が非常に大きい。持ち味であるゆったりとした伸びのある軽い泳ぎに、少しずつパワーがついてきて、アクセルを踏んだ時のスピード感が大幅に上がってきている。

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