【水泳】18歳・山口観弘が世界新記録樹立。
北島康介を超えるその能力 (2ページ目)
そんな驚愕の記録をマークした山口だが、レース後は興奮することもなくいたって冷静だった。
「これまで2回7秒台を出した時と比べても、決勝前のアップでは7秒台前半は出るなと思っていたので。むしろここまできたら2分6秒台を出しておきたかったなと思ったから、どちらかといえば悔しい部分もあります」と、野心的な発言をするほどの落ち着きぶり。
山口のすごさは、ラスト50mがそれまでの17回から21回までストローク数が増えても、減速するどころか加速するところだ。ロンドン五輪優勝のジュルタや、北島の日本記録のラスト50mがその前の50mより0秒3~5遅い33秒12と33秒27だったのに比べ、山口は逆に0秒79も速くなる32秒23だった。さらにターン前には「(ターンが)詰まったら体の疲れが変わってくるので」と、テンポを速くしたり遅くしたり調整をしているのだ。
また、平井コーチは「普通は途中でテンポを変えたら、その分体力を使って最後にへばったりするけど、それがない。これまでの常識なら最後でテンポを上げたら泳ぎが崩れて遅くなりがち。だが、山口の場合は自由自在に泳いでいて、なおかつブレーキもかからず常に前へ進んでいる。元々腕の掻きも強くて北島とは違うタイプ。『平泳ぎとはこういうものだ』という常識を作るなと、彼の泳ぎに教えられている感じもするんです」とその泳ぎを高く評価する。
鹿児島生まれの山口は、中学2年と3年の全国中学で100mと200m2冠を獲得して両種目の中学記録を樹立。さらに高2のときに、100mで北島が持つ高校記録を塗り替えて注目された選手だ。得意の200mでは足踏みをしていたが昨年の国体で2分11秒65と、日本水連が設定するインターナショナル強化記録Cを突破して吹っ切れた。
本人も「去年の11月から平井チームで練習をさせてもらい、そこから意識も高くなったし、体も強くなってパワーもついた。それが成長のきっかけだと思います。ひと掻きひと掻きごとのストリームラインの組み方もうまくなったと思う」と手ごたえを感じている。
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