2012.09.04

【水泳(視覚障害)】秋山里奈「8年越し金メダル」の舞台裏

  • 星野恭子●取材・文 text by Hoshino Kyoko
  • 越智貴雄●写真 photo by Ochi Takao

金メダルを獲得し笑顔をみせた秋山里奈選手「金メダルは重いです。いろいろなものが乗っているから」

 そういって胸元に輝くメダルを右手で優しくなでたのは秋山里奈。ロンドン・パラリンピックの競泳100m背泳ぎで接戦を制し、ようやく手にした金メダルだった。

 世界記録は何度もつくってきたが、「パラリンピックで勝たないと世界一だと思えなかった。これでやっと、真の世界一になれたって気がする」と喜びを爆発させた。

 ここまでの道のりは長く険しかった。17歳で出場したアテネ大会で銀メダルを獲ると、周囲も自分も、「北京では金」を期待した。だが、北京大会では出場選手が規定数に達せず、背泳ぎが実施種目から廃止され、泳げなかった。ショックは大きかったが、ただ「金メダルを獲るまではやめられない」という思いだけで水泳を続けた。

 ロンドン大会直前の7月、国内大会で世界記録(1分18秒59)を更新したが、そこで満足することなく、「パラリンピックならもっと記録が出せるはず」と、さらに前向きに練習に取り組んだ。体調もよく自信を持って乗り込んだロンドンでは、またも予想外の事態が起こる。

 初日の100m自由形ではフライングで失格し、続く50m自由形は予選落ち。リズムにのれないまま、100m背泳ぎの予選を迎えた。思い通りの泳ぎができず、タイムは自己ベストから3秒以上遅れる1分22秒47。全体3位で決勝には進んだが、表情は暗かった。