大学から陸上部に入って箱根駅伝出場「超異色マラソンランナー」大石巧のMGC、ロス五輪に懸ける思い (3ページ目)
【ようやくマラソンランナーとしてスタートできた】
大石は、福岡国際で2時間08分51秒の自己ベストをマークし、日本人3位となって来年10月開催のMGCの切符を手にした。早い時期にMGCの出場権を獲れたアドバンテージは大きい。開催時期の10月を想定して、今季は10月にピークを持っていく練習を行なう。高温多湿の7、8、9月に高強度の練習を行なうなか、いろいろなことを試すつもりだ。
そして、MGCの先に見据えるのがロス五輪。大石にとって、どういう位置付けなのだろうか。
「僕はパリ五輪を集大成に考えていたんですけど、大した挑戦もできず、不完全燃焼で終わってしまいました。ロス五輪に向けては、ようやくマラソンランナーとしてスタートできたなというところがあるので、本気でチャレンジできるので楽しみです。オリンピックのマラソンは特別であり、花形種目じゃないですか。その舞台で日の丸を背負って戦いたい。今はロス五輪が最終目標であり、競技者として目指す一番高い山だと考えています」
スズキからは、すでに大石の他にも、藤村共広が今年3月の東京マラソンで日本人6位、2時間08分49秒をマークし、MGC出場を決めている。
「スズキはマラソンチームなので、これから3人目、4人目とMGCに出場できる選手が出てきてほしいです。マラソン界に存在感を示していきたいですね。そうしてマラソンをやりたい選手がどんどん入ってくれるとうれしいですし、マラソンをやりたい力のある選手が来てくれるような環境を、今いる僕らがつくっていくことが大事だなと思っています」
MGCが近づくにつれ、大石の名前やチーム名の露出は増えていく。マラソンファンからも今以上に注目されることになるだろう。
「これからはMGCを走る選手として見られるでしょうし、そうなると、あまり恥ずかしい走りはできません。僕は速くて強い選手になりたいですし、その二刀流を実現しないと、MGCで勝てないと思うんです。そのためにプライドと責任を持って練習に取り組み、MGCを迎えたいです。どんな景色があるのか、それは箱根以上なのか、とにかく楽しみです」
奇しくも、6月開幕のワールドカップを戦うサッカー日本代表の森保一監督は「まだ見ぬ景色を見てみたい」と語り、大会優勝を目標に掲げている。高校までサッカーに取り組んでいた大石もまた、MGCでまだ見ぬ景色を見るために走り続ける。
(おわり)
大石巧(おおいし・たくみ)/1996年生まれ、静岡県磐田市出身。袋井高ではサッカー部に所属していたが、箱根駅伝を走ったいとこの姿にあこがれ、3年春に陸上転向を決意。ほぼ初心者ながら、いくつもの大学に電話をかけるなど進路を模索。入学した城西大では、3、4年時に箱根駅伝の8区(区間4位、21位)を走った。実業団入り後はケガに悩まされるも、自身6度目のマラソンとなる昨年12月の福岡国際マラソンで2時間08分51秒(総合4位、日本人3位)を出し、MGC(マラソングランドチャンピオンシップ/2028年ロサンゼルス五輪マラソン日本代表選考会、2027年10月開催予定)出場権を獲得した。
著者プロフィール
佐藤俊 (さとう・しゅん)
1963年北海道生まれ。青山学院大学経営学部卒業後、出版社を経て1993年にフリーランスに転向。現在は陸上(駅伝)、サッカー、卓球などさまざまなスポーツや、伝統芸能など幅広い分野を取材し、雑誌、WEB、新聞などに寄稿している。「宮本恒靖 学ぶ人」(文藝春秋)、「箱根0区を駆ける者たち」(幻冬舎)、「箱根奪取」(集英社)、「箱根5区」(徳間書店)など著書多数。近著に「箱根2区」(徳間書店)。
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